2021.04.09 更新

任意保険基準

このページでは、任意保険基準について解説します。

相談者(困り顔)

保険会社の担当者さんから「賠償金額は●円になります」と言われ、示談書にサインを求められています。サインした方がよいでしょうか?

弁護士

その金額は任意保険基準によるものです。賠償金の3つの基準をご理解いただき、納得できる金額なのかを確かめてからサインをした方がよいでしょう。

任意保険基準とは

保険会社「任意保険基準 示談書にサインを」 被害者「はい・・・?」 任意保険基準とは、保険会社が「支払い額をこの金額に抑えたい」という自社の希望をまとめた社内マニュアルです。

担当者は、この自社マニュアルで計算した金額を提示してきますが、被害者が従わなければならないものではありません。 保険会社「任意保険基準 示談書にサインを」 被害者「はい・・・?」

「基準」と言われるのは昔のなごり

このように、任意保険基準は、各保険会社内部のマニュアルでしかなく、本来「基準」と呼べるようなものではありません

では、なぜ、任意保険「基準」と言われているのでしょうか。

それは、昔、被害者に提示する金額について各保険会社が足並みを揃えた任意保険基準が存在した時期があったからです。

その時期は、会社内部のマニュアルにすぎないものではなく、各保険会社のきまりのようになっていたので、「基準」と呼んでもおかしくないものでした。

しかし、現在、そのようなものは存在せず、単にその頃のなごりで「基準」と呼ばれているにすぎません。

1970年代、保険会社は初めて、交通事故の加害者のための示談代行サービスを導入しました。
このサービスは、加害者に代行して、保険会社の担当者が被害者と示談交渉するというもので、現在では当たり前のようになっています。

しかし、当時、示談代行サービスを導入するにあたり、交通事故の被害者が、プロである保険会社の担当者と交渉しなければならなくなるのは、あまりに不利な立場となるのではないかと心配されました。

そこで、各保険会社は、被害者に提示する賠償金額の足並みを揃えることにして、統一した任意保険基準を作ることになりました。
そして、任意保険基準は、次の2つの条件をクリアしなければならないこととされました。

  1. 弁護士基準に準ずるものであること
  2. 日本損害保険協会は、財団法人日弁連交通事故相談センターと継続的に協議を行うこと

しかし、その後、上記2の協議は行われなくなりました。
そして、任意保険基準は、上記1の弁護士基準に準ずるものとはいいがたいものになりました。

そのため、1997年に任意保険基準は廃止されました

現在は、保険会社各社が、それぞれ独自に会社内部のマニュアルで、提示金額の計算方法を定めています。

このような過去のなごりで、保険会社は自社の計算方法を「任意保険基準」と呼んでいます。
しかし、現在、厳密な意味での任意保険基準は存在しません。

このようなことから、現在でも、被害者は、保険会社の担当者から「任意保険基準」という言葉をよく耳にすると思います。
ですので、このサイトにおいても、保険会社内部のマニュアルの計算方法のことを「任意保険基準」として解説しています。

弁護士基準とは

任意保険基準を使って支払い額を抑えようとする保険会社に対し、弁護士は、過去の裁判例をもとに金額を計算して交渉します。
この計算方法を弁護士基準といいます。

ケースにもよりますが、弁護士基準の金額は、任意保険基準の金額の2倍以上になることも多くあります。

弁護士基準と任意保険基準と自賠責基準の表グラフ

弁護士基準を知らずに、任意保険基準で示談をする人がいます。
金額がもっとも高くなる弁護士基準で計算し、損をしないように交渉しましょう。

自動計算機

本サイトでは、慰謝料などの賠償金自動計算機のページで、慰謝料を含めた全ての賠償金を弁護士基準で自動計算できます。

<入力画面>

自動計算機のページでは、事故に関する情報を入力していくと、慰謝料や休業損害などが弁護士基準で自動計算され、金額が次々と表示されていきます(下図の赤矢印。パソコンの場合は画面右側に表示されます)。

計算機の入力画面

<内訳表>

計算された各金額を表で確認できます(下図)。

計算機の内訳表

<計算書>

計算書が自動で作成され、金額、計算式、解説がまとめて記載されます(下図)。
計算書はPDFで印刷できます。

計算機の計算書

保険会社の提示金額が書面で届いた場合は、このサイトの自動計算機で作成した計算書と見比べてみてください。
弁護士に相談する場合も、計算書を弁護士に見せれば必要な情報がすぐに伝わります。
保険会社との情報格差をなくすために、また、弁護士に相談しやすくするために、ぜひご活用ください。

「自動計算機」はこちらです

自賠責基準とは

自賠責基準とは、保険会社が最低限支払わなければならないと法律で定められている金額の計算方法です。

あまりに賠償金額が低すぎると、交通事故の被害者の生活に重大な支障が生じてしまいかねないことから、法律で最低限の金額が定められています。
ですので、保険会社は、自賠責基準の金額を下回る金額で示談することはできません

自賠責基準について詳しくはこちら

一括払いは任意保険会社の負担する金額が分かりづらい

加害者は、自賠責保険と任意保険の2つの保険に加入していることが多いです(自賠責保険は、法律で必ず加入しなければならないことになっています)。

そのため、被害者は、加害者に対する賠償金のうち、自賠責保険金を自賠責保険会社から受け取り、残りの金額を任意保険会社から受け取ることができます(自賠責保険金の金額は、自賠責基準で計算されます)。

被害者請求

もっとも、2つの保険会社から受け取るのは、被害者に手間がかかります。

そこで、自賠責保険金額も含めた賠償金の全額を一括して任意保険会社から受け取ることもできます。その後、任意保険会社は、自賠責保険会社から自賠責保険金額を回収します。これを「一括払い」といいます。

一括払い

確かに、一括払いは、被害者にとって手間が省けます。

しかし、任意保険会社が一括払いで支払う賠償金額には、自賠責保険金額も含まれているため、任意保険会社が負担する金額がいくらかが分かりづらいといえます。

特に注意が必要なのは、任意保険会社が一括払いで提示する金額が、弁護士基準よりもかなり低く、かつ、自賠責基準とあまり変わらないような場合です。

そのような金額で示談をしてしまうと、任意保険会社は、普段、加害者から保険料を受け取っているにもかかわらず、ほとんど負担する金額がない反面、被害者としては十分な賠償を得られないということになりかねません。

あくまで、加害者側の任意保険会社は、お客である加害者のために働く立場にあります。また、会社ですので、自社の利益を出すことを目的としています。

被害者が、そのような保険会社と対等にやりとりをして、適正な賠償金を得るためには、弁護士基準について知っておく必要があります。

ただし、被害者自身の過失割合が大きい場合(50%程度を上回るなど)は、例外的に、弁護士基準の金額が自賠責基準の金額を下回ることがあります。
なぜなら、自賠責基準は、交通事故被害者の生活を保障するための最低限の金額が被害者に支払われるようにするために法律で定められたものですので、被害者自身の過失割合があってもその分の減額をしないのが原則とされているからです。
このように、弁護士基準の金額が自賠責基準の金額を下回る例外的な場合は、任意保険会社は、自賠責基準の金額を示談金として提示してくると考えられますので、その金額で示談をすることになります。

詳しくは自賠責基準のページをご覧ください

このページの執筆者
弁護士 深田茂人(大分県弁護士会所属、登録番号33161)
大分市城崎町の深田法律事務所代表。
弁護士歴15年、交通事故の相談を800件以上担当してきました。交通事故被害者と保険会社の情報格差をなくしたいと思い、当サイトにて執筆しています。