2021.04.09 更新

慰謝料などの裁判

裁判所

このページでは、被害者が加害者に慰謝料などの賠償金の支払いを求める民事裁判をする場合について解説します。

なお、加害者に懲役や罰金などの刑罰を科すための刑事裁判については加害者にとるべき対応のページをご覧ください。

裁判のメリットとデメリット

ケースによっては、加害者や保険会社との話し合いがまとまらず、裁判をした方がよいことがあります。

相談者(困り顔)
弁護士に相談したら「裁判した方がよい」と言われました。正直、悩んでいます・・・
弁護士
裁判がどのようなものかイメージしづらい方は多いと思います。少し専門的になりますが、わかりやすく解説したいと思います

裁判のメリット

裁判のメリットは、以下のとおりです。

弁護士基準で計算してもらえる

弁護士基準とは、裁判所が交通事故の賠償金額を決めるときの目安です(裁判基準ともいいます)。

弁護士基準の金額は、保険会社が提示する金額(任意保険基準)の2倍以上になることもありますので、裁判のメリットは大きいといえます。

電卓を持つ弁護士
慰謝料などの賠償金自動計算機のページでは、賠償金を「弁護士基準」で自動計算できます

ただし、弁護士基準はあくまで「目安」なので、個別の事情によって増減する可能性があります。

詳しくは弁護士基準のページをご覧ください

後遺障害等級を再判断してもらえる

後遺症が残った場合に、後遺障害等級の認定を保険会社に申請すると、等級が通知されます。

その等級に納得がいかないとき、裁判をすれば、裁判所が等級を再判断してくれます。

保険会社に異議申し立てをする方法もありますが、別の機関に判断してもらいたいときは、裁判が適しています。
どちらの方法がよいかは、弁護士に相談することをおすすめします。

裁判のデメリット

裁判をするデメリットは、以下のとおりです。

時間がかかる

裁判となれば、加害者側は被害者のケガはそもそも事故で負ったものなのか、というところから争ってくることがあります。

このように争われる点について一つ一つ証拠を用いて裁判官に主張していかなければならないため、賠償金の金額が決定するまで時間がかかります。

裁判でよく争われるのは次のような点です。

  • ケガや死亡は事故が原因か
  • ケガの内容や重さ
  • 後遺障害等級は何級か
  • 事故が起きたことについての加害者や被害者の落ち度(過失割合)

このような点が争われる場合、病院での検査結果やカルテ、医学文献、警察の実況見分調書などを証拠として精査する必要があります。

賠償金が入ってくるまでに1年以上かかることも珍しくありません。

費用がかかる

裁判所にかかる費用と、弁護士に依頼した場合に弁護士にかかる費用があります。

裁判所にかかる費用

裁判所にかかる費用は、数万円程度であることが多いです。
たとえば、加害者に請求する金額(請求額)が1000万円の場合に裁判所にかかる費用は5万円強です。
請求額が高いほど、裁判所にかかる費用は高くなります。

弁護士にかかる費用

弁護士に依頼した場合は弁護士費用がかかります。
弁護士費用の金額は、依頼する弁護士によって異なります。

なお、弁護士費用の負担をなくしたり減らしたりする方法として、次のものがあります。

  • 弁護士費用特約を利用する
    被害者ご自身やご家族が加入している自動車保険に弁護士費用特約が付いている場合は、その保険で弁護士費用がまかなわれる可能性があります(詳しくは弁護士のページをご覧ください)。
  • 裁判で弁護士費用も上乗せして請求する
    判決では、賠償金額の1割程度を弁護士費用として上乗せして加害者に支払いを命じることが一般的です(ただし、不足する分は被害者負担になります)。

手間がかかる

自分で裁判しようとすると、大変な手間がかかりますし、難しいことも多いと思います。

その点、弁護士に依頼をすれば、手間は大幅に減ります。
弁護士が代わりに裁判所に行くので、本人が裁判所に行く機会は少なくなります。
もっとも、弁護士との打ち合わせは必要になります。

裁判の流れ

裁判は、以下の1~4の流れで進んでいきます。

  1. 裁判所を選択する
  2. 訴状を提出する
  3. 審理
  4. 判決

順に解説します。

裁判所を選択する

交通事故の被害者は、以下の場所を管轄する裁判所の中から選択できます。

  • 被害者の住所地
  • 加害者の住所地
  • 事故発生地
  • 車の所有者などの運行供用者の住所地(人身事故のみ)

そして、上記の場所の裁判所のうち、請求金額が140万円を超える場合は地方裁判所、140万円以下の場合は簡易裁判所で裁判をすることになります。

なお、請求金額が60万円以下であり、内容が複雑でなければ、簡易裁判所の少額訴訟手続を利用できます。手続きが簡単になっていて、裁判所に1回行っただけで終了するのが原則です。人身事故よりも物損事故でよく利用されます。

訴状を提出する

被害者は、上記で選択した裁判所に「訴状」を提出します。
これにより、裁判を起こしたことになります。

訴状には、

  • 請求金額とその内訳
  • 事故発生の日時・場所・態様
  • 加害者のどのような不注意によって事故が発生したか
  • ケガの内容や治療経過(人身事故の場合)

などを記載します。

審理

被害者と加害者が裁判所に行き、裁判官が審理します。

通常、審理は1回では終わらず、複数回、裁判所に行くことになります。

弁護士に依頼した場合、弁護士が代わりに裁判所に行くので、被害者が裁判所に行く機会は少なくなるのが一般的です。

相談者(困り顔)
弁護士に頼んで裁判をしてもらっているのですが、どのように進んでいるのかよくわかりません
弁護士
依頼した弁護士によく聞いてみましょう。以下の解説をお読みいただくと、弁護士の話がわかりやすくなると思います

言い分の整理

まず、被害者と加害者がそれぞれ「事実はこうだった」と言い分を主張します。
そして、裁判所がそれらの言い分を整理します。

  • 例1
    被害者「加害者の車は、一時停止せずに飛び出した」
    加害者「一時停止した」
  • 例2
    被害者「事故によって、足を骨折し、手首のじん帯を損傷した」
    加害者「手首のじん帯損傷は、事故によるものではない」
  • 例3
    被害者「車のドアは取り替える必要がある」
    加害者「取り替えずに、板金修理で十分である」

証拠の提出

次に、被害者または加害者がそれぞれ自分の言い分を裏付ける証拠を提出します。
以下は、よくある証拠の例です。

  • 上記の例1の場合
    被害者が、目撃者の話を裁判官に聞いてほしいと申請する(証人の申請)。
    加害者が、警察官が作成した実況見分調書を提出する。
  • 上記の例2の場合
    被害者が、事故直後に手首が腫れたところを撮影した写真を提出する。
    加害者が、手首のケガに関する記載が無い病院のカルテを提出する。
  • 上記の例3の場合
    被害者が、修理業者の見積書を提出する。
    加害者が、別の修理業者の見積書を提出する。

有利な証拠

被害者に有利な証拠の典型例としては、以下のものがあります。

  • 事故をした車が大きく損傷している写真
    事故による衝撃が大きかったと考えられるので、事故によってケガをしたことを証明しやすいです。
  • 身体の異常を示す検査結果
    ケガの存在や内容を証明しやすいです。
  • 症状が重いと記載されたカルテ
    症状が重いことを証明しやすいです。

不利な証拠

被害者に不利な証拠の典型例としては、以下のものがあります。

  • 事故をした車の損傷が小さい写真
    事故による衝撃が小さかったと裁判官が考える可能性があるので、事故によってケガをしたことを裁判官が認めない可能性があります。
  • 身体の異常がみつからないという検査結果
    病院の検査で常に異常が発見できるとは限りませんが、異常を示す検査結果がない場合は、ケガの存在を裁判官が認めない可能性があります。
  • 症状が軽いと記載されたカルテ
    症状が軽いと裁判官が判断する可能性があります。

判決

審理が終わったら、裁判官が判決をします。

判決は、加害者に対する請求を認める場合は、「●円を支払え」と加害者に命じます(実際の支払いは、加害者側の保険会社がします)。
請求を認めない場合は「請求を認めない」という判決が下されます。

被害者または加害者は、判決に不服がある場合、2週間以内に控訴することにより、高等裁判所などで改めて審理してもらえます。

なお、判決になる前に、裁判官が和解案を示すなどして、被害者と加害者に和解するよう説得してくることが多いです。
被害者も加害者も、和解するかしないかを自由に決めることができます。

もし和解になれば、その内容で解決し、判決にはなりません。

このページの執筆者
弁護士 深田茂人(大分県弁護士会所属、登録番号33161)
大分市城崎町の深田法律事務所代表。
弁護士歴15年、交通事故の相談を800件以上担当してきました。交通事故被害者と保険会社の情報格差をなくしたいと思い、当サイトにて執筆しています。