保険会社への対応

更新日:2021年12月06日

執筆者:弁護士 深田 茂人

交通事故被害者が損をしないための情報を手軽に得られるように、「交通事故お役立ち手帳」サイトを運営・執筆しています。そのコンセプトに賛同する全国の交通事故に詳しい弁護士とともに、無料相談にも対応しています。弁護士歴18年、交通事故相談担当1000件以上、大分県弁護士会所属(登録No33161)。

執筆者プロフィール

交通事故に遭ったときに、被害者が加害者側の任意保険会社にとるべき対応について、流れにそって解説していきます。

携帯電話をかけるスーツ姿の男性

保険会社とのやりとりの流れ

加害者側の保険会社とのやりとりの流れは、通常、以下のとおりです。

相談者(困り顔)
相手の保険会社とは、どのような流れでやりとりしていくのですか?
弁護士
はい。以下の1~6の順でやりとりしていきます。全体の流れを見ていただいた後に、1つずつ説明していきますね。
  1. 保険会社から連絡がくる
    入通院先を伝えると、保険会社から病院に治療費の支払いについて連絡してもらえます。
  2. 保険会社から必要書類が送られてくる
    必要事項を記入して送り返すと、治療費や休業損害などの支払いを受けられます。
  3. 治療後、しばらくすると治療費の打ち切りを打診してくる
    治療費の打ち切りが妥当かについてのやりとりが必要です。
  4. 後遺症がある場合は、後遺障害診断書の書式が送られてくる
    後遺障害診断書を医師に記入してもらい、保険会社に提出すると、しばらくして、後遺障害等級の認定結果が伝えられます。
  5. 示談交渉
    賠償金についての話し合いをします。まとまれば、示談成立となり、賠償金が支払われます。
  6. 裁判
    話し合いがまとまられなければ、裁判をします。

以下、それぞれの段階について説明します。

保険会社から連絡がくる

加害者側の保険会社の担当者から連絡がきます。
連絡が来ない場合は、こちらから加害者側の任意保険会社に連絡してみましょう。

保険会社から必要書類が送られてくる

保険会社から以下のような書類が届きます。それぞれの書類について解説します。

一括対応の同意書

加害者側は、自賠責保険と任意保険の2つの保険に加入しているのが一般的です。

自賠責保険からは最低限の金額が支払われ、不足する分を任意保険から支払われる仕組みになっています。

そのため、本来の仕組みどおりならば、被害者は、まずは自賠責保険からのお金を治療費などの支払いに充て、自賠責保険のお金では足りなくなってきたら、次に任意保険に不足分を請求することになります。

被害者請求

しかし、それでは、被害者は自賠責保険と任意保険の2カ所に請求手続きをとらなければならないため、手間が増えてしまいます。

そこで、任意保険会社は、自賠責保険が支払うべき金額も含めて賠償金全額を支払い、その後に立て替えた自賠責保険の金額を自賠責保険会社に請求するというサービスを行っています。このサービスを「一括払い」といい、多くの被害者が利用しています。

一括払い

この一括払いのサービスを利用する場合、被害者は、「一括払の同意書」にサインして、任意保険会社に提出する必要があります。

自賠責保険と任意保険の2カ所に請求手続きをとるのは、かなりの手間になりますので、「一括対応の同意書」にサインした方がよいでしょう。

なお、途中で一括払いのサービスを解除してもらうこともできます。

自賠責保険から後遺症の分の賠償金(後遺症慰謝料など)を支払ってもらうために、後遺障害等級の申請をする手続きでは、一括払いを解除して、被害者自ら自賠責保険に請求することも多いです。
なぜなら、後遺障害等級は後遺症慰謝料などの金額に大きく影響するため、等級の申請手続きは、賠償金を支払う側の任意保険会社に任せきりにするのではなく、被害者自身や被害者側の弁護士が提出書類を十分に検討した方がよいと考えられるからです。

個人情報の取得に関する同意書

保険会社は、病院に治療費を支払うためには、治療の内容と費用を確認する必要があります。
そのため、病院の発行する診断書や診療報酬明細書を取得する必要があるのですが、これらは被害者(患者)の個人情報です。

そこで、保険会社は、被害者がサインした「個人情報の取得に関する同意書」を病院に示すことによって、被害者(患者)の情報を入手して、病院に治療費を支払っています。

ですので、基本的には同意書にサインをして保険会社に送ってよいでしょう。

しかし、「医師に対して治療状況を確認すること」が同意事項に含まれている場合、保険会社の担当者が治療状況の確認の際に、治療の効果がなくなっているのではないか(裏を返せば、治療費の支払いを打ち切ってよいかということ)を厳しく問い合わせるようなケースも散見されます。

そこで、治療状況の確認には被害者の同席を条件にするなどの方策も考えられます。
また、「医療照会」が同意事項に含まれている場合も、照会に対する医師の回答書を被害者も見ることができることを条件にするなどの方策が考えられます。

このような方策をとるかはケースバイケースですので、弁護士に相談することをお勧めします。

通院交通費明細書

交通事故の被害者は、通院のたびに交通費がかかってしまいます。
そこで、その都度または一括して、加害者側の保険会社に交通費を請求することができます。

そのためには、保険会社から送られてくる通院交通費明細書に交通費の内訳を記入して、保険会社に送り返す必要があります。

詳しくは通院交通費のページをご覧ください

休業損害証明書

交通事故のケガの治療や安静のために仕事を休んで収入が減った場合、減収分のお金を保険会社に請求することができます。

お勤めの方(正社員・アルバイト・会社役員など)は、その減収をお勤め先に証明してもらう必要があります。
そのために、保険会社から送られてくる「休業損害証明書」をお勤め先に記入してもらい、保険会社に送り返す必要があります。

休業損害については職業ごとに各ページで詳しく解説しています。
サラリーマン・OL(正社員・アルバイトなど)の休業損害
会社役員の休業損害
自営業(個人事業主)の休業損害
主婦などの家事従事者の休業損害
無職・失業中の方の休業損害

人身事故証明書入手不能理由書

交通事故でケガをした場合、病院の診断書を警察に提出して、人身事故扱いにしてもらうのが原則です。

しかし、以下のような理由で、警察に診断書が提出されずに、物損事故扱いになってしまっているケースもあります。

  • 事故当日にケガをしていないと思ったので、そのように警察に伝えたが、後日、体調が悪くなってきた。
  • ケガが軽く、自分にも事故の落ち度があったので、物損事故のままにしておいた。

ケガをしている以上は、人身事故扱いにしてもらうことをお勧めしますが(詳しくは警察への対応のページをご覧ください)、物損事故扱いのままで、ケガの治療費や慰謝料などの賠償金を保険会社に支払ってもらえることもあります。
そのためには、保険会社から送られてくる「人身事故証明書入手不能理由書」に必要事項を記入して、保険会社に送り返す必要があります。

ただし、人身事故証明書入手不能理由書を保険会社に提出していても、人身事故扱いとはなっていないことを理由に、軽いケガと判断されて、治療費を早く打ち切られたり、後遺障害等級が認定されづらかったりするリスクがあります。

治療費の打ち切りを打診してくる

治療を続けてしばらくすると、保険会社の担当者は、治療費打ち切りの打診をしてきますが、まだ治療が必要な場合は、はっきりとそのように伝えましょう。

軽微な事故でなければ、最初のうちは、すぐには打ち切ってこないことが多いです。
しかし、しばらくすると、また打ち切りを打診してきます。
少しずつ、打ち切りを強く言ってくるようになりますので、治療の継続が必要であれば、医師にその理由を確認して、保険会社に伝えましょう

詳しくは治療費のページをご覧ください

後遺障害診断書の書式が送られてくる(後遺症がある場合)

治療が終了しても完治せず、後遺症がある場合、後遺障害診断書の書式が保険会社から送られてきます。
送られてこない場合は、「治療を終えますが、後遺症があるので、後遺障害診断書の書式を送ってください。」と保険会社の担当者に伝えましょう。

後遺障害診断書を医師に記入してもらい、保険会社に提出すると、後遺障害等級の認定結果が伝えられます。

なお、加害者側の任意保険会社に後遺障害診断書を送って後遺障害等級の申請をしてもらうのではなく、自分で申請することもできます。
その場合は、自分で申請に必要な書類を準備して、加害者側の自賠責保険会社に提出します。

詳しくは後遺症のページをご覧ください

示談交渉

賠償金額について、保険会社と話し合います。

保険会社は、任意保険基準で賠償金額を計算して提示してきますが、保険会社が希望する金額にすぎず、被害者が従わなければならないものではありません。

被害者は、弁護士基準で計算した金額を提示して、交渉することが重要です。

弁護士基準について詳しくはこちら

電卓を持つ弁護士
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裁判

賠償金額について、保険会社と話し合いがまとまらない場合は、裁判をすることなります。

裁判について詳しくはこちら

このページの執筆者
弁護士 深田茂人

弁護士 深田茂人
大分県弁護士会所属
登録番号33161

大分市城崎町の深田法律事務所代表。
弁護士歴18年、交通事故の相談を1000件以上担当してきました。交通事故被害者と保険会社の情報格差をなくしたいと思い、当サイトにて執筆しています。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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