2021.09.15 更新

給与所得者(正社員やアルバイトなど)の休業損害

正社員、派遣社員、アルバイト、パート、サラリーマン、OL、会社員、個人事業主に雇用されている方などの「給与所得者」の休業損害について解説します。

会社員

ケガのため仕事を休みました。その損害は請求できますか?

弁護士

入通院や安静のために仕事を休み、お給料が減ってしまった方は、その分を保険会社へ請求できます。また、有給休暇を使った方でも、その有給休暇分を請求できます。


  • 休業損害を「弁護士基準」で計算しましょう。
  • 「休業損害証明書」を保険会社に提出しましょう。

「休業損害証明書」の書き方、書式のダウンロードはこちら

いつもらえるのか

通帳とATM

ケガの治療や安静のために仕事を休んで、収入が減った分のお金は、「休業損害」として保険会社に請求できます。

休業損害は、被害者の生活に大きく関わるため、示談する前であっても、保険会社が支払ってくれるのが一般的です(慰謝料などは示談後に支払われます)。

ただし、保険会社から求められた資料を提出する必要があります(休業損害証明書や源泉徴収票など)。

給料の締め日が過ぎるたびに支払ってもらうこともできますし、まとめて支払ってもらうこともできます。

また、重傷の場合、出費が多くなりやすいので、ある程度まとまったお金を先払いしてくれることもあります。
保険会社に相談してみるとよいでしょう。

なお、被害者の過失割合が50%程度を上回るほど大きい場合、保険会社は、示談前の休業損害の支払いを拒むことがあります。
保険会社は、被害者の過失割合の分を支払う必要はないので、示談前に休業損害を全額支払った場合、被害者の過失割合の分を、後日の示談のときに、慰謝料から差し引きます。
しかし、被害者の過失割合が大きいと、差し引き分が不足するリスクがあるため、示談前に休業損害を支払おうとしないのです。
過失割合を調べて、弁護士に相談することをおすすめします。

金額の計算方法

給与所得者の休業損害は次の式で計算します。

1日あたりの収入額×休んだ日数

「1日あたりの収入額」は、給与明細書の総支給金額欄(下図)の事故前3ヶ月分を90日で割り算した金額です。

給与明細書

つまり、所得税や社会保険料などの控除をする前の、基本給・残業代・各種手当など支給される全ての金額の3ヶ月分を90日で割り算した金額です。

すでに、勤め先に休業損害証明書を書いてもらっている場合は、支給金額計欄(下図)の合計を90日で割り算して「1日あたりの収入額」を計算することもできます。

休業損害証明書の支給金額合計欄

上記の計算方法は「弁護士基準」によるものです。
金額が最も高くなる弁護士基準で計算し、保険会社と金額について話し合うことが大切です。

弁護士基準と任意保険基準の表グラフ

電卓を持つ弁護士
慰謝料などの賠償金自動計算機のページでは、「弁護士基準」で休業損害や慰謝料などの賠償金を自動計算できます

飛び飛びで休んだ場合

連続して仕事を休んだ場合、「1日あたりの収入額」は、事故前3ヶ月分の収入を「90日」で割り算して計算します。
しかし、飛び飛びで休んだ場合は、土日祝日の休みを含めない「稼働日数」で割り算しましょう

たとえば、事故前の1月・2月・3月の総収入額が90万円、月20日勤務(土日祝日が休み)のケースでは、1日あたりの収入額は、事故前3ヶ月分の収入90万円を「90日」で割り算すると、1万円になります。

4月1日から20日まで連続して休んでいる場合は、1万円×20日=20万円を休業損害として請求して問題ありません。

カレンダー

しかし、1日、6日、10日、16日、20日(休んだ日数は6日)というように飛び飛びで休んだ場合、1万円×6日=6万円とすると、不当に金額が低くなってしまいます。
なぜなら、かけ算する「6日」に土日祝日が含まれていないからです。

そこで、1日あたりの収入額を計算するときに、土日祝日の休みを含めない「稼働日数」で割り算する必要があります。

上の例の場合は、90万円÷(20日×3)=1万5000円と計算します。
そして、休んだ日数をかけ算した、1万5000円×6日=9万円を休業損害として請求します。

本サイトの慰謝料などの賠償金自動計算機をご利用の際は、飛び飛びで仕事を休んだ場合、事故前3か月分の収入を「稼働日数」で割り算した金額を「1日あたりの収入額」欄に入力してください。

有給休暇分も請求しましょう

「休んだ日数」に有給休暇分も含めて請求しましょう。

多くの裁判例では、本来なら自由に使える有給休暇を事故で使わざるをえなくなったことを理由に、有給休暇分も含めて請求できると判断されています(東京地裁平成6年10月7日判決など)。

ただし、少数ではありますが、有給休暇分を休業損害としては認めず、慰謝料として考慮した裁判例もあります(大阪地裁平成15年8月27日判決)。
もし、保険会社が、このような裁判例を根拠に、有給休暇分の支払いを拒む場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

後遺症がある場合

休業損害を計算するときの「休んだ日数」は、症状固定日(しょうじょう こていび)までの日数にしてください。
症状固定日とは、治療を続けても症状が改善しなくなった最初の日です。

症状固定日より後の減収分は、休業損害ではなく、後遺症逸失利益(こういしょう いっしつりえき)として計算します。

症状固定日と休業損害の関係

賞与が減った場合

交通事故のケガで欠勤したために、賞与が不支給となったり減額された場合、保険会社から「賞与減額証明書」という書式をもらいましょう。
この書式を勤務先に記入してもらい、保険会社へ提出することで、不支給分などを請求できます。

なお、保険会社から、裏付けの資料として、就業規則や賞与規程などの提出を求められることがありますので、そのときは勤務先へ相談しましょう。

よくある質問

給与所得者の休業損害について、よくある質問に回答しています。

仕事を休んだら、必ず休業損害が支払われますか?

必ず支払われるというわけではありません。
保険会社から「本当に仕事を休む必要があるのか?」と疑問をもたれて、休業損害が支払われなかったり、休んでいる途中で休業損害の支払いが止められたりするケースもありえます。

そのようなケースでは、まず、身体の状態や仕事ができないことを伝えてみましょう。

それでも支払ってもらえない場合は、医師の診断書や病院の検査結果などを保険会社に提出して、仕事を休む必要があることを証明する必要があります。

入社して3か月以内に事故に遭った場合、どのように計算しますか?

休業損害は、事故前3か月の収入実績をもとに計算されるのが原則ですが、入社してすぐに交通事故に遭った場合など、3か月分の収入実績がないこともありえます。

そのような場合は、雇用契約書や労働条件通知書などに記載された給与額をもとに計算しましょう。

しかし、保険会社は、収入の実績が少ないことを理由に、休業損害をなかなか支払わないこともありますので、そのときは弁護士に相談しましょう。

退職して収入が無くなった分も請求できますか?

ケガの治療や安静のための欠勤が原因で、解雇されたり、退職したりすることがあります。
そのように収入を失った場合も休業損害を請求することができます。

その場合、身体が回復して働けるようになるまでの期間の休業損害を請求できることが多いです。

請求する場合は、解雇通知書、解雇理由証明書、離職票の記載内容によって、交通事故でのケガが仕事を辞める原因になったことを証明する必要があります。
また、働けないことを医師の診断書などで証明する必要があります。

上記のような資料を提出しても、保険会社が休業損害の支払いを渋るようであれば、弁護士に相談することをおすすめします。

事故で昇給が遅れた分も請求できますか?

ケガの治療や安静のための欠勤が原因で、昇給や昇格が遅れることがあります。
その減収分も休業損害として請求できます。

ただし、就業規則や賃金規程でケガによる欠勤がどのように昇給や昇格に影響したのか証明する必要があります。

就業規則や賃金規程で昇給や昇格がいつどのようになされるかを明確に定めているケースは多くないため、証明が難しいことがあります。

まずは、弁護士に就業規則などを見てもらい、アドバイスを受けることをおすすめします。

掛け持ちしていたすべての仕事の分を請求できますか?

アルバイトや副業なども含め、掛け持ちしているすべての仕事の減収について休業損害が請求できます。
請求する場合は、すべての勤務先に休業損害証明書をかいてもらいましょう。

労災の休業給付とは別に請求できますか?

業務中や通勤中に交通事故に遭ったために、労災で休業給付を受けた場合は、二重取りにならないよう、保険会社に請求する休業損害から労災の休業給付額を差し引く必要があります(休業給付特別支給金については差し引く必要はありません)。

詳しくは既払い金のページをご覧ください

失業保険とは別に請求できますか?

交通事故のケガのために退職して給付された失業保険金は、保険会社に請求する休業損害から差し引く必要はありません

つまり、失業保険と休業損害の両方を受け取ることができます。

なぜなら、失業保険は、失業者の生活の安定を図る社会保障制度の一種であり、被害者の損害の填補を目的とするものではないと考えられているからです(東京地裁昭和47年8月28日判決)。

詳しくは既払い金のページをご覧ください

このページの執筆者
弁護士 深田茂人(大分県弁護士会所属、登録番号33161)
大分市城崎町の深田法律事務所代表。
弁護士歴15年、交通事故の相談を800件以上担当してきました。交通事故被害者と保険会社の情報格差をなくしたいと思い、当サイトにて執筆しています。