2021.04.09 更新

休業損害(休業補償)

リハビリ中の男性

休業損害とは、交通事故によるケガの治療や安静のために仕事を休んで減った収入のことです。

休業損害と休業補償のちがい、いつもらえるのかいつまでの減収分を請求できるのか、金額の計算方法について解説します。

休業損害と休業補償のちがい

弁護士に相談に来られる方々は、休業損害と休業補償を同じ用語として認識されている方が多くいらっしゃいます。

細かい話になりますが、厳密には、

  • 休業損害=加害者(または加害者側保険会社)に請求するもの
  • 休業補償=労災保険の一部として支給されるもの

です。

休業補償は、仕事中や通勤途中の交通事故の場合に、労災保険に請求できるものです。もっとも、労災保険から支払われた休業補償は、加害者側保険会社に休業損害を請求する際には差し引かれます(特別支給金をのぞく)。

少しややこしい話になりましたが、要は、

  • 加害者側保険会社に請求するのは「休業損害」
  • 仕事中や通勤途中の事故なら、労災保険から「休業補償」がもらえる(ただし、休業損害から差し引かれる)

ということを知っておいていただければ十分です。

以下、加害者側保険会社に請求する「休業損害」について解説します。

労災保険に請求する休業補償について知りたい方は労災保険のページをご覧ください。

休業損害はいつもらえる?

保険会社から提出を求められた資料(休業損害証明書、源泉徴収票、確定申告書のコピーなど)を提出すれば、治療中などでまだ示談をしていなくても、保険会社が休業損害を先払いしてくれるのが一般的です。

なぜなら、休業損害の支払いが遅れてしまうと被害者の生活が立ちゆかなくなるおそれがあるからです(慰謝料などは示談した後に支払われるのが一般的です)。

もちろん、示談の前に支払われた休業損害は、示談をするときに差し引かれます
支払い未了の休業損害がある場合、その分は示談のときに支払われます。

ただし、被害者の過失割合が大きかったり、休業損害の計算について保険会社と意見が食い違ったりすると、休業損害をすぐには支払ってもらえないことがあります。
そのような場合は、早めに弁護士に相談することをお勧めします。

休業損害はいつまでの減収分を請求できる?

休業損害を請求できるのは「治療中であって働けない期間」までの減収分です。

「治療中」とは

  • 完治した日
  • 完治せずに後遺症が確定した日(=症状固定日)

のいずれか早い日までです。

症状が固定して後遺症が確定すると、それ以後に働けない分は、休業損害ではなく、後遺症逸失利益(こういしょう いっしつりえき)として、加害者側保険会社に請求することになります。

症状固定日と休業損害の関係

「働けない」かは、医師の判断、病院での検査結果、カルテの記載などをもとに判断されます

勤務日数や勤務時間の一部が働けない場合も、その働けない分を請求できます。

もし、加害者側保険会社が休業損害の打ち切りを打診してきた場合は、

  • まだ治療中であって後遺症が確定していないこと
  • 働けないこと

についての医師の意見書や病院での検査結果などを示し、保険会社と交渉をする必要があります。

休業損害の計算方法(弁護士基準)

休業損害の計算方法は、職業ごとに異なります。
以下、弁護士基準での計算方法を、職業ごとに解説します。

弁護士基準とは、裁判で裁判官が金額を決める際に目安にする基準です。
加害者側の任意保険会社との話し合いの場面でも、弁護士基準の金額で交渉することが重要です。
詳しくは弁護士基準のページをご覧ください。

サラリーマン・OL(正社員・アルバイト)の休業損害

正社員やアルバイトの方の休業損害の計算方法は次のとおりです。

1日あたりの収入額✕休んだ日数

「1日あたりの収入額」と「休んだ日数」は、休業損害証明書によって証明します。

詳しくはサラリーマン・OL(正社員・アルバイト)の休業損害のページをご覧ください。

会社役員の休業損害

会社役員の休業損害の計算方法は次のとおりです。

1日あたりの収入額✕休んだ日数

「1日あたりの収入額」と「休んだ日数」は、休業損害証明書によって証明します。

会社員と違う点としては、収入額が役員報酬中の労務対価部分の金額に限られるということがあります。

詳しくは会社役員の休業損害のページをご覧ください。

自営業(個人事業主)の休業損害

自営業の方(個人事業主)の休業損害の計算方法は次のとおりです。

事故前年の確定申告所得額÷365日×仕事を休んだ日数

青色申告の場合は、確定申告所得額に青色申告特別控除額を加算して計算します。
休業中の支払わなければならなかった家賃などの固定経費がある場合は、確定申告所得額に固定経費を加算して計算します。

詳しくは自営業者(個人事業主)の休業損害のページをご覧ください。

家事従事者(主婦など)の休業損害

主婦などの家事従事者の休業損害の計算方法は次のとおりです。

女性の平均年収÷365日✕家事ができなかった日数

ただし、兼業の家事従事者(兼業主婦など)の場合は、サラリーマンやOLとしての休業損害である「1日あたりの収入額✕休んだ日数」と比較していずれか高い方の金額を請求します。

詳しくは主婦などの家事従事者の休業損害のページをご覧ください。

無職の方の休業損害

無職の方や失業中の方は、仕事を休んで収入が減ったということがないので、原則として休業損害を請求することはできません

ただし、例外的に以下のような場合には休業損害を請求できる可能性があります。

  • 就職が内定していて治療期間中に就職する予定だった場合
  • 治療期間が長いため、その期間中に就職する可能性があった場合

詳しくは無職・失業者の休業損害のページをご覧ください。

休業損害の自賠責保険金

上記の計算方法は、弁護士基準によるものであり、加害者側の任意保険会社に休業損害を請求する際に使うことをお勧めするものです。

また、交通事故被害者は、加害者側の自賠責保険会社に対して、自賠責保険金を請求することもできます(その場合は、その後に任意保険会社に請求する際に自賠責保険金額が差し引かれます)。

自賠責保険金は、保険会社が交通事故被害者に最低限払わなければならないと法律で定められているお金のことです。そして、その計算方法を自賠責基準といいます。

詳しくは自賠責保険のページをご覧ください。

休業損害の自賠責保険金の計算方法は次のとおりです(弁護士基準とは異なるので注意してください)。

6100円✕実休業日数
*2020年3月31日以前に発生した事故の場合は「5700円✕実休業日数」です。
*立証資料などにより、1日あたりの収入額が上記金額を超えることが明らかな場合は、1日あたり上限1万9000円で計算されます。

詳しくは自賠責基準のページをご覧ください。

このページの執筆者
弁護士 深田茂人(大分県弁護士会所属、登録番号33161)
大分市城崎町の深田法律事務所代表。
弁護士歴15年、交通事故の相談を800件以上担当してきました。交通事故被害者と保険会社の情報格差をなくしたいと思い、当サイトにて執筆しています。