2021.09.12 更新

後遺症逸失利益(後遺障害逸失利益)

後遺症逸失利益とは、後遺症が仕事に影響して稼ぎにくくなったお金のことです(後遺障害逸失利益ともいいます)。

後遺症が影響して仕事のパフォーマンスが下がる場合、加害者側の保険会社に「後遺症逸失利益」を請求します。

車いすで仕事をする女性

後遺症逸失利益を請求できる場合

次の1,2のいずれにもあたる場合に、後遺症逸失利益を請求できます。

  1. お身体に残った後遺症について後遺障害等級が認定された
  2. 後遺症が仕事に影響して収入が減る可能性が高い

それぞれについて解説します。

後遺障害等級が認定されること

後遺症逸失利益の請求が認められるためには、後遺障害等級が認定される必要があります。

後遺障害等級は、後遺症の重い順に1級から14級まであり、保険会社から通知されるものです。

後遺障害等級

後遺症が1級から14級のいずれにもあてはまらないとして、後遺障害等級が認定されない場合(「等級非該当」といいます)、後遺症逸失利益を請求できないことが多いです。

減収の可能性が高いこと

後遺症逸失利益の請求が認められるためには、後遺症が仕事に影響して減収の可能性が高いことが必要です。

たとえば、無職で将来働く予定がない高齢者は、後遺症があっても減収の可能性がありませんので、後遺症逸失利益を請求できないのが一般的です。

また、公務員などで後遺症があっても収入が減らないようなケースでは、後遺症逸失利益を請求できないこともあります(ケースによりますので、弁護士に相談することをおすすめします)。

一括払いと定期払いがあります

後遺症逸失利益の支払い方法は、次の2つがあります。

  • 一括で払ってもらう方法
  • 定期的に払ってもらう方法

一括払いの方法をとることが多いですが、いずれの方法をとるべきかについては弁護士に相談することをお勧めします(保険会社は、定期払いの方法にはなかなか応じないことが多いです)。

金額の計算方法

電卓で計算する人

一括払いの場合と定期払いの場合で計算方法が異なりますので、それぞれ分けて解説します。

一括払いの場合

一括払いの方法をとる場合の弁護士基準による計算方法は、次のとおりです(弁護士基準について詳しくはこちら)。

年収✕後遺症のために稼ぎにくくなった割合✕後遺症が仕事に影響する年数のライプニッツ係数

まず、「年収」に「後遺症のために稼ぎにくくなった割合」をかけ算して、1年分の稼ぎにくくなった金額を計算します。

次に、その金額に「後遺症が仕事に影響する年数のライプニッツ係数」をかけ算して後遺症逸失利益の金額を算出します。

後遺症のために稼ぎにくくなった割合

次のとおり、後遺障害等級ごとに、目安とされる数値があります。

労働能力喪失率表

上記の数値はあくまで目安とされるものであり、仕事内容が後遺症の影響を特に受けやすかったり受けにくかったりする場合は、増減する可能性があります。

たとえば、片手の小指の末端の骨を2分の1以上失った場合、認定される後遺障害等級は13級であり、目安となる数値は9%です。
しかし、被害者がプロのピアニストであったため、仕事への影響が特に大きい場合は、大幅にパーセンテージが上がる可能性があります。

後遺症が仕事に影響する年数のライプニッツ係数

「後遺症が仕事に影響する年数」は、67歳までの年数とされるのが原則です。

ただし、高齢者の場合は平均余命までの2分の1の年数とされます。

また、後遺症がずっとは残らないと考えられる場合は、その分だけ年数が短縮される可能性があります(ムチウチなどが典型例です)。

なお、年数ではなくライプニッツ係数でかけ算するのは、将来稼げるはずだったお金をすぐに請求するため、金利を差し引く必要があるからです。

事故日が2020年3月31日以前の金利は年5%、2020年4月1日以後の金利は年3%とされており、それぞれのパーセンテージに応じたライプニッツ係数で計算することになります。

たとえば5年の場合、5%のライプニッツ係数は4.3295、3%のライプニッツ係数は4.5797です。

具体例

たとえば、年収500万円、40歳の男性会社員が後遺障害等級10級の認定を受けた場合、

500万円×27%×18.327=2474万1450円

が弁護士基準による後遺症逸失利益の金額になります。
*18.327は、27年(67歳-40歳)のライプニッツ係数(年3%)です。

以下では、職業ごとに分けて、より詳しく解説します。

サラリーマン・OL(正社員・アルバイトなど)

会社員の後遺症逸失利益の計算方法は次のとおりです。

年収✕後遺症のために稼ぎにくくなった割合✕後遺症が仕事に影響する年数のライプニッツ係数

事故にあう前の年の年収で計算するのが原則です。
しかし、将来の昇給や減給が予定されている場合は、それらも考慮して計算される可能性があります。

詳しくは給与所得者(会社員やアルバイトなど)の後遺症逸失利益のページをご覧ください。

会社役員

会社役員の後遺症逸失利益の計算方法は次のとおりです。

年収✕後遺症のために稼ぎにくくなった割合✕後遺症が仕事に影響する年数のライプニッツ係数

基本的には、会社員と同じ計算方法ですが、年収が役員報酬中の労務対価部分の金額に限られる点で異なります。

詳しくは会社役員の後遺症逸失利益のページをご覧ください。

自営業(個人事業主)

自営業の方(個人事業主)の後遺症逸失利益の計算方法は次のとおりです。

事故前年の確定申告所得額✕後遺症が影響して稼ぎにくくなった割合✕稼ぎにくくなった年数のライプニッツ係数

青色申告の場合は、確定申告所得額に青色申告特別控除額を加算して計算します。

詳しくは自営業(個人事業主)の後遺症逸失利益のページをご覧ください。

主婦などの家事従事者

主婦などの家事従事者の後遺症逸失利益の計算方法は次のとおりです。

女性平均年収✕後遺症のために家事をしにくくなった割合✕後遺症が仕事に影響する年数のライプニッツ係数

外でも働いている兼業の家事従事者(兼業主婦など)の場合は、上記の計算による家事従事者としての後遺症逸失利益と、会社員などの後遺症逸失利益のいずれか高い方の金額を請求するのが一般的です。

詳しくは主婦などの家事従事者の後遺症逸失利益のページをご覧ください。

学生・幼児

学生・幼児の後遺症逸失利益の計算方法は次のとおりです。

予測される将来の年収✕後遺症のために稼ぎにくくなった割合✕後遺症が仕事に影響する年数のライプニッツ係数

予測される将来の年収は、性別や年齢などを考慮しつつ、日本人の平均年収を目安として計算されることが多いです。

詳しくは学生・幼児の後遺症逸失利益のページをご覧ください。

無職・失業中の方

無職・失業中の方であっても、将来的に就職する可能性が高いのであれば、後遺症により将来にわたって稼ぎにくくなるお金が生じると考えられますので、その分を後遺症逸失利益として請求できるのが一般的です。

その場合の無職の方の後遺症逸失利益の計算方法は次のとおりです。

年収✕後遺症のために稼ぎにくくなった割合✕後遺症が仕事に影響する年数のライプニッツ係数

年収については、失業前の年収の推移、年齢、職歴、学歴、資格や技能などを考慮して個別に決められることになります。

詳しくは無職・失業中の方の後遺症逸失利益のページをご覧ください。

外国人

永住資格があったり、在留資格の更新が確実に認められたりする場合は、将来にわたって、日本で働くと考えられますので、日本の物価や収入水準をもとに、後遺症逸失利益の計算をします。つまり、日本人と同じ計算をします。

永住資格はなく在留資格の更新も確実には認められない場合は、将来にわたって、ずっと日本で働くとは考えられないため、日本で働くことを予定していた期間の経過後は、日本国外で働くものとして、計算をする必要があります。通常は、出身国の物価や収入水準をもとに、後遺症逸失利益の計算をします。

詳しくは外国人の後遺症逸失利益のページをご覧ください。

定期払いの場合

定期払いの場合は、「年収✕後遺症のために稼ぎにくくなった割合」を12ヶ月で割り算して、その金額を毎月定期的に支払ってもらうなどの計算方法がとられます。

このページの執筆者
弁護士 深田茂人(大分県弁護士会所属、登録番号33161)
大分市城崎町の深田法律事務所代表。
弁護士歴15年、交通事故の相談を800件以上担当してきました。交通事故被害者と保険会社の情報格差をなくしたいと思い、当サイトにて執筆しています。