大分市城崎町の深田法律事務所代表。
弁護士歴18年、交通事故の相談を1000件以上担当してきました。交通事故被害者と保険会社の情報格差をなくしたいと思い、当サイトにて執筆しています。
後遺症慰謝料(後遺障害慰謝料)
更新日:2021年12月06日
- 後遺症が残ってしまい、つらい思いをしています。
- 後遺症による精神的苦痛に対し、加害者はお詫びとして「後遺症慰謝料」を支払わなければなりません。弁護士基準で金額を計算し、請求しましょう。
後遺症慰謝料とは
交通事故によるケガが完治せず、後遺症が残る場合があります。
その場合、後遺症によるさまざまな日常生活の不便のため、精神的な苦痛が生じます。
このように、後遺症によって精神的な苦痛を負う被害者に対し、加害者がお詫びするためのお金を「後遺症慰謝料(または後遺障害慰謝料)」といいます。
そして、被害者は、加害者側の保険会社に対し、後遺症慰謝料を請求することになります。
なお、「慰謝料」には、後遺症慰謝料のほかに、
- 傷害慰謝料
交通事故で被害者にケガをさせたことを加害者がお詫びするためのお金 - 死亡慰謝料
交通事故で被害者を死亡させたことを加害者が遺族にお詫びするためのお金
もあります。
交通事故でケガをして後遺症が残った被害者は、後遺症慰謝料だけでなく傷害慰謝料も請求する必要があります。
弁護士基準で計算しましょう
保険会社は、社内マニュアルで後遺症慰謝料の計算をし、被害者に提示してきます。
しかし、この社内マニュアルは「支払い額をこの程度に抑えたい」という保険会社側の希望にすぎず、被害者が従わなければならないものではありません。
弁護士基準で計算し、保険会社と金額について話し合いましょう。
なぜなら、弁護士基準は、過去の裁判例をもとにした計算方法であり、もっとも金額が高くなるからです。
後遺症慰謝料は、弁護士基準によると、次のとおり後遺障害等級ごとに金額が異なります。
(後遺障害等級は、後遺症の重い順に1級から14級まであり、保険会社から通知されるものです。)
<弁護士基準による後遺症慰謝料の金額>
なお、別表一は介護を要する後遺症の等級であり、別表二は原則として介護を要しない後遺症の等級です。
後遺障害等級の具体例は、次のとおりです(3~14級は全て別表二になります)。
- 1級(別表一)
両腕と両脚が麻痺し、物を持ち上げられず、立つことができない - 1級(別表二)
両眼の失明 - 3級
1眼が失明、かつ、0.02<他眼視力≦0.06 - 5級
片腕が麻痺し、物を持ち上げられない - 8級
片方の股・ひざ・足首の3関節の動かせる範囲が2分の1以下 - 10級
片方の股・ひざ・足首のうち1関節の動かせる範囲が2分の1以下 - 12級
痛みや痺れが残ることを立証する検査結果がある - 14級
痛みや痺れが残ることを医師の診察やケガをした状況などによって説明できる
当サイトの慰謝料などの賠償金自動計算機では、別表一のケースで近親者がいる場合には、過去の裁判例の傾向から近親者自身の慰謝料も考慮して、2800万円を3360万円に増額し、2370万円を2670万円に増額しています。もっとも、介護や近親者の状況など個別の事情によって金額は変化します。詳しくは弁護士に相談することをお勧めします。
個別の事情によって金額が増減します
弁護士基準は、過去の裁判例をもとにした計算方法であり、あくまで目安とされる金額です。
そのため、個別の事情によっては、金額が高くなったり低くなったりすることがあります。
以下では、弁護士基準の金額が増減する個別の事情の例を解説します。
後遺症が悪化する可能性がある
将来、後遺症が悪化する可能性が高いことが医学的に証明される場合は、増額する可能性があります。
仕事や生活への影響が特に大きい
弁護士基準では、後遺障害等級ごとの後遺症慰謝料の金額があります。
しかし、同じ等級であっても、仕事や生活への影響が特に大きいケースでは、増額する可能性があります。
たとえば、片手の小指の末端の骨を2分の1以上失った場合、認定される後遺障害等級は13級であり、弁護士基準によると後遺症慰謝料は180万円になります。
しかし、被害者がピアニストであったため、仕事や生活への影響が特に大きい場合は、後遺症慰謝料が増額する可能性があります。
仕事や生活への影響が特に小さい
具体的な後遺症の内容によっては、仕事や生活への影響が特に小さいケースもあります。
そのようなケースでは、減額する可能性があります。
その他
たとえば、以下のような場合も増額する可能性があります。
- 飲酒運転や赤信号無視など事故の態様が悪質
- ひき逃げなど事故後の行動が悪質
後遺障害等級が認定されなければ、後遺症慰謝料を請求できないのか?
後遺障害等級が認定されない場合、保険会社から「非該当」(等級に該当しないという意味です)と通知されます。
この場合、後遺症慰謝料の請求が認められる可能性は高くありません。
しかし、後遺症はあるけれど、単に等級の認定基準に達していないだけというケースがあります。
典型例は、1本または2本の歯を失い、入れ歯やブリッジなどの人工物を入れた場合です。
等級の認定基準では、3本以上の歯を失わない限り、等級に該当しないとされています(歯を失った後遺障害の等級はこちら)。
しかし、上記の例では、1本または2本の歯を失ったという後遺症があります。
このようなケースでは、後遺症慰謝料が認められる可能性があります。
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