大分市城崎町の深田法律事務所代表。
弁護士歴18年、交通事故の相談を1000件以上担当してきました。交通事故被害者と保険会社の情報格差をなくしたいと思い、当サイトにて執筆しています。
弁護士基準で慰謝料増額!交通事故の賠償金計算と増額の方法
更新日:2022年07月06日
「保険会社から提示された慰謝料の金額は低くないかな」
「弁護士基準ってなに?」
「弁護士基準で計算すると、慰謝料が増額するって本当?」
- 弁護士基準で計算すると、保険会社からあなたに示された金額がいかに低いかがわかるはずです
3つの基準
弁護士基準とは、過去の裁判例をもとにした賠償金額の計算方法です。
弁護士はこの計算方法を使います。
それに対し、保険会社は、弁護士基準よりも金額が低くなる「任意保険基準」や「自賠責基準」を使います。
- 計算方法が複数あるなんて・・・。じゃあ、どうやって金額を決めるんですか?
- たしかに、ここが分かりにくいところです。でも、とても重要なところですので、分かりやすく説明しますね
自賠責基準
交通事故の被害者は、治療費がかかったり、仕事ができなくなって収入が減ったりします。
保険会社から支払われる金額があまりに低いと、生活ができなくなってしまうこともありえます。
そこで、法律によって、保険会社が支払わなければならない最低限の金額が定められています。
その金額の計算方法を自賠責基準といいます。
つまり、保険会社は、自賠責基準で計算した金額を下回る提示ができないことになっています。
あくまで「最低限」なので、自賠責基準で計算すると、とても低い金額になってしまいます。
任意保険基準
保険会社は、少なくとも自賠責基準の金額を支払わなければならないと法律で決められていますが、それ以上のいくらの金額を支払うのかについては、法律で決められていません。
そのため、話し合いで金額を決める必要があります。
そこで、保険会社の担当者は、自賠責基準の金額を下回らないようにしつつ、自社のマニュアルで計算した金額を提示してきます。
この会社内部のマニュアルを任意保険基準といいます。
自賠責基準の金額より少しだけ高い程度にとどまることが多いです。
任意保険基準は「支払い額をこの金額に抑えたい」という保険会社の希望をまとめたものにすぎず、被害者が従わなければならないものではありません。
弁護士基準
任意保険基準を使って支払い額を抑えようとする保険会社に対し、弁護士は、過去の裁判例をもとに金額を計算して、保険会社と話し合います。
この計算方法を弁護士基準といいます。
任意保険基準よりも高く、2倍以上の金額になることもよくあります。
弁護士基準を知らずに、任意保険基準、ましてや自賠責基準で示談をする人がいます。
金額がもっとも高くなる弁護士基準をもとに計算し、損をしないように交渉しましょう。
- 保険会社と交渉することが大切なんですね。弁護士さんに依頼した方がよいのでしょうか?
- そうですね。自分で交渉するよりも、金額が大きく上がると思います
- 弁護士さんに交渉を依頼したら、弁護士基準と全く同じ金額で示談できますか?
- 交渉だけで弁護士基準の金額にどれだけ近づけられるかが弁護士の腕の見せどころです。しかし、保険会社も支払い額を抑えようと抵抗するので、弁護士基準と全く同じ金額をめざす場合は、裁判をしなければならないことが多いです
- じゃ、弁護士さんに裁判を依頼すれば、弁護士基準と全く同じ金額になりますか?
- 弁護士基準は過去の裁判例をもとにしていますから、その可能性は高くなります。ただし、あくまで「基準」なので、事故ごとの個別の事情によって金額が増減することがあります
金額を増減させる個別の事情
交通事故といっても、事故の態様、ケガの内容、被害者の収入や家族構成などはさまざまであり、同じ事故は一つとしてありません
弁護士基準では、近似する過去の事故の裁判例をもとに、おおよその金額が計算されます。
そして、事故ごとの細かい違いについては「個別の事情」として考慮し、金額が調整されます。
- 個別の事情で金額が変わるかもしれないのに、弁護士基準で計算して、保険会社と交渉できるんですか?
- 大丈夫ですよ。弁護士基準に比べると、任意保険基準はかなり低額であることが多いです。だから、どのような個別の事情があるにせよ、弁護士基準の金額を伝えて交渉する必要があると思います
- 個別の事情が交渉に影響することはありますか
- 個別の事情によって金額がどのように変わるかは、裁判してみないとわからないところがあります。個別の事情も含めて、納得できる金額になれば示談をし、納得できなければ裁判をすることになります
このサイトの慰謝料などの賠償金自動計算機のページでは、慰謝料などの賠償金額を弁護士基準で自動計算することができます。保険会社と金額について話し合う前に、ぜひ、ご活用ください。
弁護士基準で計算
弁護士基準で計算すると、慰謝料はいくらになるのかについて解説します。
また、交通事故では、休業損害などの慰謝料以外のお金も請求できますが、それらのお金も、弁護士基準で計算すると増額することが多いです。
弁護士基準で計算すると増額する可能性のある慰謝料以外のお金についても解説します。
慰謝料
慰謝料とは、加害者が被害者に精神的な負担をかけたことをおわびするためのお金です。
次の3つの種類があります。
- 傷害慰謝料
ケガをさせたことをおわびするためのお金。入通院慰謝料ともいいます。 - 後遺症慰謝料
ケガが完治せずに後遺症が残ったことをおわびするためのお金。後遺障害慰謝料ともいいます。 - 死亡慰謝料
死亡させたことをおわびするためのお金
それぞれの「弁護士基準」と「個別の事情」について解説します。
傷害慰謝料
ケガをさせたことをおわびするためのお金(傷害慰謝料)は、弁護士基準では、ケガの内容と入通院期間によって金額が決められます。
次の表のとおりです。
ただし、自覚症状のみのムチウチ、または、軽度の打撲・ねんざ・キズの場合は、次の表が使われます。
入院期間と通院期間の交差する欄の金額が、弁護士基準での傷害慰謝料の金額です。
たとえば、入院1ヶ月・通院1ヶ月の場合、弁護士基準によると、他覚所見がないムチウチや軽い打撲・キズの場合は52万円、それ以外のケガの場合は77万円になります。
なお、自賠責基準によると、1日あたり4300円ですので、4300×60日=25万8000円になります。
弁護士基準では上の表が目安にされますが、個別の事情がある場合は金額が増減されることがあります。
主な個別の事情には、以下のものがあります。
- 増額される可能性がある事情
ケガにより生命の危険が継続
手術を繰り返した
多数の箇所を骨折
脳や脊髄を損傷
内臓が破裂
事故の態様が悪質(飲酒運転や赤信号無視など)
事故後の行動が悪質(ひき逃げなど)
入学試験を断念
留年 - 減額される可能性がある事情
実通院日数が少ない
症状が軽い
後遺症慰謝料
後遺症が残ったことをおわびするためのお金(後遺症慰謝料)は、弁護士基準では次の表のとおり、後遺障害等級によって金額が決められます(別表一は介護を要する後遺症、別表二は介護を要しない後遺症です)。
なお、自賠責基準では、次のとおりです(被扶養者がいる場合は括弧内の金額になります)。
弁護士基準と見比べると、とても低いのがわかると思います。
- 別表一
1級:1650万円(1850万円) 2級:1203万円(1373万円) - 別表二
1級:1150万円(1350万円) 2級:998万円(1168万円) 3級:861万円(1005万円) 4級:737万円 5級:618万円 6級:512万円 7級:419万円 8級:331万円 9級:249万円 10級:190万円 11級:136万円 12級:94万円 13級:57万円 14級:32万円
弁護士基準では上の表が目安にされますが、個別の事情がある場合は金額が増減されることがあります。
主な個別の事情には、以下のものがあります。
- 増額される可能性がある事情
近親者の介護の負担が大きい
仕事や生活への影響が特に大きい
将来、後遺症が悪化する可能性がある - 減額される可能性がある事情
仕事や生活への影響が特に小さい
詳しくは後遺症慰謝料(後遺障害慰謝料)のページをご覧ください
死亡慰謝料
死亡させたことをおわびするためのお金(死亡慰謝料)は、弁護士基準では次のとおり、亡くなられた方の家庭内でのお立場によって金額が決められます。
- 家族の生活費の大部分を稼いでいた人
2800万円 - 家事や子育てをしていた親
2500万円 - 父母や兄弟に仕送りなどをしていた人
2500万円 - 独身者・子供・高齢者など
2000~2500万円
なお、自賠責基準では400万円ですが、被扶養者や遺族がいる場合は加算されます(被扶養者は200万円。遺族は、1人の場合550万円、2人の場合650万円、3人以上の場合750万円)。
弁護士基準では上記の金額が目安にされますが、個別の事情がある場合は金額が増減されることがあります。
主な個別の事情には、以下のものがあります。
- 増額される可能性がある事情
若年者
近親者がいる
近親者が精神疾患に罹患
事故の態様が悪質(飲酒運転や赤信号無視など)
事故後の行動が悪質(ひき逃げなど) - 減額される可能性がある事情
高齢者
慰謝料以外に請求できるお金
慰謝料は、加害者が被害者に精神的苦痛を与えてしまったことをおわびするためのお金です。
交通事故の被害者は、慰謝料以外に、治療費などの経済的な損失分のお金も、保険会社に請求することができます。
たとえば、病院にかかる治療費はもちろん、ケガの治療のために仕事ができずに減った収入(休業損害)や、後遺症が残ったために稼ぎにくくなったお金(後遺症逸失利益)などがあります。
このような交通事故で加害者に請求できるお金をまとめて「賠償金」といいます。
慰謝料は賠償金の中の一つです。
保険会社は賠償金全てを任意保険基準で計算しようとしますが、弁護士基準で計算することが重要です。
特に逸失利益(いっしつりえき)などは、慰謝料よりも増額の幅が大きいことがよくあります。
慰謝料以外に請求できるお金の「弁護士基準」と「個別の事情」については、以下の各ページで解説しています。
- 治療費
- 通院交通費
被害者が病院に通うための交通費 - 入院雑費
入院中の日用品の購入費、栄養剤購入費、電話代、テレビ賃借料、家族交通費などの雑費 - 入通院付き添い費
近親者の付き添いの負担を金銭換算したもの - 休業損害
事故によるケガのために仕事を休んで収入が減ったお金 - 後遺障害逸失利益(こういしょうがい いっしつりえき)
後遺症が仕事に影響して稼ぎにくくなったお金。後遺症逸失利益ともいいます。 - 将来の介護費用
重度の後遺症があるために将来にわたって必要となる介護の費用 - 死亡逸失利益(しぼう いっしつりえき)
亡くなったことによって稼げなくなったお金(稼働分)と受け取れなくなった年金(年金分) - 葬儀費用
- その他の費用
被害者の落ち度が大きい場合
事故発生についての被害者の落ち度(過失割合)がかなり大きいために、例外的に自賠責基準の金額が弁護士基準の金額よりも大きくなるケースがあります。
なぜなら、被害者の事故後の生活を守るために最低限の金額を保障する自賠責基準では、被害者の過失割合が大きくても、その分の減額をしないのが原則だからです。
このように、被害者の過失割合が大きいために、自賠責基準の金額が弁護士基準の金額よりも大きくなるという例外的な場合は、保険会社は自賠責基準の金額で提示してくると考えられますので、その金額で示談すればよいということになります。
関連記事
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
このサイトは、交通事故被害者に不可欠な情報を提供しています。
・慰謝料を本格的に自動計算できます
・過失割合が何%か調べられます
・事故から解決までの流れ
事故から解決までの各場面の対応マニュアルを読むことができます。
・弁護士に無料相談
「交通事故被害者にできる限りの情報を届けたい」
「交通事故のことなら何でも相談してほしい」
という、全国の交通事故に詳しい弁護士に無料で相談できます。
- 地域を選択すると、その地域の無料相談できる弁護士を検索できます。