大分市城崎町の深田法律事務所代表。
弁護士歴18年、交通事故の相談を1000件以上担当してきました。交通事故被害者と保険会社の情報格差をなくしたいと思い、当サイトにて執筆しています。
死亡事故
更新日:2021年12月06日
交通事故により、ご家族を亡くされた方には、謹んでお悔やみ申し上げます。
大変なご心痛のことと思いますが、加害者側の保険会社と話をするにあたっては、次のことを知っておいてください。
- 保険会社に請求すべきお金は3つあります。
- 保険会社の提示する金額ではなく、弁護士基準の金額で話し合いましょう。
なお、ご遺族が事故後の各場面でとるべき対応については、死亡事故の遺族の対応のページをご覧ください。
請求すべきお金は3つあります
交通事故でお亡くなりになった場合、加害者側の保険会社に請求すべきお金には、次の3つがあります。
- 死亡慰謝料
被害者を死亡させたことに対して、加害者が遺族にお詫びするためのお金 - 死亡逸失利益(しぼう いっしつりえき)
被害者が生きていたら、将来にわたって得られるはずであったお金 - 葬儀費用
葬儀にかかったお金
そして、これら3つのお金の金額は「弁護士基準」で計算すべきです。
弁護士基準で計算しましょう
保険会社の提示する金額を鵜呑みにしないでください。
保険会社が提示する金額は、会社内部のマニュアルで計算したものにすぎず、「支払い額をこの金額に抑えたい」という保険会社の単なる希望でしかありません。
これに対し、弁護士基準は、過去の裁判例をもとにした計算方法であり、金額が最も高くなります。
弁護士基準で計算し、保険会社と金額について話し合うことが大切です。
以下では、死亡慰謝料・死亡逸失利益・葬儀費用について、弁護士基準による具体的な計算方法を解説します。
死亡慰謝料
死亡慰謝料とは、被害者を死亡させたことに対して、加害者が遺族にお詫びするためのお金です。
弁護士基準では、以下のとおり、被害者の家庭内でのお立場によって金額が決められています。
- 家族の生活費の大部分を稼いでいた人
2800万円 - 家事や子育てをしていた親
2500万円 - 父母や兄弟に仕送りなどをしていた人
2500万円 - 独身者・子供・高齢者など
2000~2500万円
死亡逸失利益
死亡逸失利益とは、被害者が生きていたら、将来にわたって得られるはずであったお金です。
仕事の収入分である「稼働逸失利益」と、年金収入分である「年金の逸失利益」があります。
死亡逸失利益=稼働逸失利益+年金の逸失利益
それぞれについて解説します。
稼働逸失利益
被害者は、無職の高齢者等以外は、事故に遭わなければ、将来も働いて収入を得ていたと考えられます。
その収入分を「稼働逸失利益」として保険会社に請求できます。
弁護士基準の計算方法は、次のとおりです。
年収×(100%-生きていたら生活費に使った割合)×生きていたら働いたであろう年数のライプニッツ係数
生きていたら生活費に使った割合
以下の割合が目安とされますが、家族構成や収入の多寡などによって、パーセンテージが増減する可能性があります。
- 男性
扶養家族なし:50%
扶養家族1人:40%
扶養家族2人以上:30% - 女性
30%
生きていたら働いたであろう年数のライプニッツ係数
「生きていたら働いたであろう年数」は、原則として67歳までの年数です。
ただし、高齢者の場合は平均余命までの2分の1の年数です。
年数ではなく、ライプニッツ係数で計算するのは、将来にわたって得られるはずの収入を今すぐ請求するため、金利を差し引く必要があるからです。
計算例
年収500万円の37歳の男性(扶養家族3名)が亡くなった場合
500万円×(100%-30%)×19.6004=6860万1400円
*「19.6004」は、67歳-37歳=30年の年3%のライプニッツ係数です。なお、2020年3月31日以前の事故の場合は、年5%のライプニッツ係数である「15.3725」で計算します。
職業ごとに細かな違いがありますので、くわしくは死亡逸失利益のページをご覧ください。
年金の逸失利益
被害者が年金受給中の高齢者や障がい者の場合、事故に遭わなければ、将来にわたって年金を受け取るはずであったと考えられます。
その年金収入分を「年金の逸失利益」として保険会社に請求できます。
弁護士基準の計算方法は、次のとおりです。
年金額×(100%-生きていたら本人が生活費に使った割合)×平均余命までの年数のライプニッツ係数
生きていたら本人が生活費として使った割合
50~60%とされるケースが多いです。
年金は本人の生活費に使われる可能性が高いと考えられているためです。
平均余命までの年数のライプニッツ係数
日本人の平均余命までの年数のライプニッツ係数を用いて計算されます。
年数ではなく、ライプニッツ係数で計算するのは、将来にわたって得られるはずの年金を今すぐ請求するため、金利を差し引く必要があるからです。
計算例
年金200万円の70歳の女性が亡くなった場合
200万円×(100%-50%)×14.8775=1487万7500円
*生きていたら本人が生活費として使った割合は「50%」で計算しています。
*70歳の女性の平均余命は20.21年です。その端数を切り捨てた20年のライプニッツ係数(年3%)が「14.8775」です。なお、2020年3月31日以前の事故の場合は、年5%のライプニッツ係数である「12.4622」で計算します。
葬儀費用
次のお金を葬儀費用として請求できます。
- 葬儀業者に支払った費用
- 火葬・埋葬料
- 葬儀広告代
- 花代
- 弔問客に提供する食事代
- お布施・読経・戒名・法名代
- 墓地・墓石費用
- 仏壇・位牌購入費用
- 49日までの法要代
弁護士基準では、このような葬儀費用を請求できるのは上限150万円とされるのが原則です。
事故後に病院で治療を受けた場合
事故後に病院で治療を受けた場合は、上記のお金のほかに、治療費などの以下のお金も請求できます。
詳しくは、それぞれのページで解説しています。
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