2021.09.07 更新

傷害慰謝料(入通院慰謝料)

このページでは傷害慰謝料について解説します。
相談者(困り顔)

交通事故でケガをして、とても痛かったです。病院に行くのも大変でしたし、家族や職場にいろいろと迷惑をかけたのも辛かったです

弁護士

そのような精神的な負担に対するおわびのお金を「傷害慰謝料」として請求しましょう

【弁護士のアドバイス】

  • 傷害慰謝料には「相場」があります。金額表をご覧ください。
  • 「個別の事情」によって相場の金額は増減します。

傷害慰謝料とは

慰謝料とは、加害者が被害者に与えた精神的負担をおわびするためのお金です。

交通事故では次の3種類の慰謝料があります。

  • 傷害慰謝料
    ケガでつらい思いをさせたことをおわびするためのお金。入通院慰謝料
    ともいいます。
  • 後遺症慰謝料
    後遺症が残ってつらい思いをさせたことをおわびするためのお金。後遺障害慰謝料ともいいます。
  • 死亡慰謝料
    死亡させたことをおわびするするためのお金。

このページでは「傷害慰謝料」について解説します。

傷害慰謝料の「相場」

保険会社が提示する金額は、会社内部のマニュアルで計算したものにすぎず、「支払い額をこの金額に抑えたい」という保険会社の単なる希望でしかありません。

被害者としては、金額が最も高くなる「弁護士基準」で計算し、保険会社と金額について話し合うことが大切です。

以下では、弁護士基準を「相場」として、その計算方法を解説します。

弁護士基準と任意保険基準の表グラフ

弁護士基準について詳しく知りたい方はこちら

弁護士基準の金額表

傷害慰謝料の弁護士基準の金額は、下の別表Ⅰのとおりです。
入院期間と通院期間が交差する欄の金額になります(単位は「万円」)。

傷害慰謝料の別表1

ただし、自覚症状のみのムチウチ、または、軽度の打撲・ねんざ・キズの場合は、下の別表Ⅱが使われます。

傷害慰謝料の別表2

なお、自覚症状のみのムチウチとは、MRIなどの他覚所見で異常がみつからないムチウチのことです。

表の見方

表の見方は、以下のとおりです。
骨折を例に、別表Ⅰを使って解説しています。
自覚症状のみのムチウチなどの場合は、別表Ⅱを使って同じ見方をしてください。

入院のみの場合

該当する入院月数の欄の金額を見ます。
例)骨折で入院3ヶ月の場合:145万円(別表Ⅰ)

通院のみの場合

該当する通院月数の欄の金額を見ます。
例)骨折で通院6ヶ月の場合:116万円(別表Ⅰ)

入院後に通院した場合

該当する入院月数と通院月数が交差する欄の金額を見ます。
例)骨折で3ヶ月の入院をした後に6ヶ月の通院をした場合:211万円(別表Ⅰ)

入院月数に端数がある場合

日割りで計算します(ひと月は30日として計算します)。
計算例)骨折で100日(3ヶ月+10日)入院した場合
入院3ヶ月の慰謝料145万円+(入院4ヶ月の慰謝料184万円-入院3ヶ月の慰謝料145万円)÷30日✕10日=158万円(別表Ⅰ)

通院月数に端数がある場合

日割りで計算します(ひと月は30日として計算します)。
計算例)骨折で200日(6ヶ月+20日)通院した場合
通院6ヶ月の慰謝料116万円+(入院7ヶ月の慰謝料124万円-通院6ヶ月の慰謝料116万円)÷30日✕20日=121万3333円(別表Ⅰ)

入院や通院の月数に端数がある場合

次の計算方法によって計算します。
計算例)骨折で100日入院した後に200日通院した場合
入院100日の慰謝料158万円+(総治療期間300日の慰謝料145万円-入院期間の100日に相当する通院慰謝料78万6666円)=224万3334円(別表Ⅰ)

自動計算機ですぐ計算

本サイトの賠償金自動計算機なら、傷害慰謝料などを「弁護士基準」ですぐ自動計算できます。
自分で計算する面倒がなく、個人情報の登録も不要です。

保険会社と話をする前に、具体的な金額を知っておきましょう。

相場の金額を増減させる「個別の事情」

弁護士基準の金額は「個別の事情」によって増減します

弁護士基準の金額は「個別の事情」によって増減

詳しくは弁護士基準のページをご覧ください

以下、傷害慰謝料の金額を増減させる主な個別の事情について解説します。

実通院日数が少ない

傷害慰謝料を弁護士基準で計算するときは「通院期間」が使われます(上の表をご覧ください)。

ただし、1週あたり平均2日ほども通院していないなど、通院期間が長いわりには「実際に通院した日数(実通院日数)」が少ない場合、弁護士基準の金額が低くなる可能性があります。
なぜなら、実通院日数が少ない場合、通院による精神的負担が少なかったといえるからです。

もっとも、ケガによる精神的な負担は通院によるものだけではありません。
ケガが重かったり、辛い治療を受けたりすると、たとえ実通院日数は少なかったとしても、精神的な負担は大きいといえます。

そこで、ケガの重さや治療の内容を考慮した上で、精神的な負担が少ないと考えられる場合には、実際の通院期間を上限としつつ、以下のとおり「通院期間」を短縮して計算することがあります

  • 自覚症状のみのムチウチ、または、軽度の打撲・ねんざ・キズの場合
    実通院日数の3倍程度
    を通院期間とみなす。
    たとえば、1ヶ月の間に2日のみ通院した場合、2日×3日=6日の通院期間として計算する。
  • 上記以外のケガの場合
    実通院日数の3.5倍程度
    を通院期間とみなす。
    たとえば、1ヶ月の間に2日のみ通院した場合、2日×3.5日=7日の通院期間として計算する。
電卓を持つ弁護士
本サイトの賠償金自動計算機では、傷害慰謝料について「実通院日数」を考慮することなく「通院期間」で計算しています
相談者(困り顔)
実通院日数が少なくても、通院期間で計算してよいのですか?
弁護士
はい。保険会社に請求をする段階では、いったん通院期間で計算しておき、その後の交渉の状況に応じて、実通院日数を考慮して減額を検討するのが現実的な交渉方法だと思います
相談者(質問)
どうしてですか?
弁護士
実通院日数を考慮して計算すべきかは、裁判官によって判断が異なる可能性があり、裁判をしてみないと分からないものだからです
相談者
なるほど。裁判をしてみないと分からないんですね
弁護士
はい。ただ、弁護士であれば、ケガの重さや治療の内容などを考慮して、ある程度は予測できます。示談をする前には、弁護士に相談することをおすすめします

症状が重い

特に症状が重いという場合、弁護士基準よりも増額される可能性があります。

典型例としては以下の場合があります。

  1. ケガにより生命の危険が継続した場合
  2. 手術を繰り返した場合
  3. 多数の箇所を骨折した場合(両手を骨折した場合など、一カ所のみの骨折に比べると、生活への支障が著しく大きくなるため)
  4. 脳や脊髄を損傷した場合
  5. 内臓が破裂した場合

*本サイトの賠償金自動計算機では、過去の裁判例などの傾向から、上記1または2のいずれかにあてはまる場合には弁護士基準の1.45倍に、上記3~5のいずれかにあてはまる場合には弁護士基準の1.25倍に増額して計算しています。
もっとも、上記にあてはまる場合であってもケガの状況は千差万別であり、全てのケースで同じように増額されるとは限りません
示談をする前には弁護士に相談することをおすすめします。

また、他にも、ギプス固定中などのために自宅で安静にしていなければならなかった期間などは、入院期間と同じくらいの精神的苦痛があったとして、傷害慰謝料が増額される可能性があります。

症状が軽い

事故の態様、ケガをした態様、カルテの記載などによって、治療期間中の症状が特に軽いと判断される場合には、弁護士基準より減額される可能性があります。

その他

その他にも、弁護士基準の金額より増減される可能性がある事情は様々なものが考えられます。
以下は、増額される可能性のある例です。

  • 留年した
  • 入学試験を断念した
  • 飲酒運転や赤信号無視など事故の態様が悪質
  • ひき逃げなど事故後の行動が悪質

傷害慰謝料の具体例

以下では、傷害慰謝料の金額について具体例をあげて解説します。
弁護士基準の金額であり、個別の事情によっては増減することがあります。

ムチウチの慰謝料

MRIなどの他覚的所見で異常があるか無いかによって金額が異なります。

MRIなどの他覚的所見で異常が無い場合(自覚症状のみ)
下の別表Ⅱの金額

傷害慰謝料の別表2

MRIなどの他覚的所見で異常がある場合
下の別表Ⅰの金額

傷害慰謝料の別表1

弁護士
保険会社は、他覚的所見で異常があっても、金額の低い別表Ⅱを使おうとすることが多いです。裁判が必要になることもあります
(財)日弁連交通事故相談センター東京支部発行の「民事交通事故訴訟損害賠償算定基準」(いわゆる赤い本)2002年版244頁「むち打ち損傷被害者相談における留意点」(羽成守弁護士)
「むち打ち症の場合に他覚所見があるかないかということは、実は委員会の『赤い本』でも区別をしております。これは皆さん方ご承知のように慰謝料に別表のⅠとⅡとありまして、Ⅰが通常の傷害、他覚所見のないむち打ち症については別表Ⅱを使うということで作ったんですが、いつの間にか、むち打ち症に関しては全部別表Ⅱを使うというような雰囲気になりつつあります。これは間違いです。」(*太字引用者)

通院1ヶ月の慰謝料

MRIなどの他覚的所見で異常が無い場合(自覚症状のみ)
19万円(上の別表Ⅱの通院1ヶ月の欄)

MRIなどの他覚的所見で異常がある場合
28万円(上の別表Ⅰの通院1ヶ月の欄)

通院3ヶ月の慰謝料

MRIなどの他覚的所見で異常が無い場合(自覚症状のみ)
53万円(上の別表Ⅱの通院3ヶ月の欄)

MRIなどの他覚的所見で異常がある場合
73万円(上の別表Ⅰの通院3ヶ月の欄)

通院6ヶ月の慰謝料

MRIなどの他覚的所見で異常が無い場合(自覚症状のみ)
89万円(上の別表Ⅱの通院6ヶ月の欄)

MRIなどの他覚的所見で異常がある場合
116万円(上の別表Ⅰの通院6ヶ月の欄)

入院1ヶ月の慰謝料

MRIなどの他覚的所見で異常が無い場合(自覚症状のみ)
35万円(上の別表Ⅱの入院1ヶ月の欄)

MRIなどの他覚的所見で異常がある場合
53万円(上の別表Ⅰの入院1ヶ月の欄)

入院3ヶ月の慰謝料

MRIなどの他覚的所見で異常が無い場合(自覚症状のみ)
92万円(上の別表Ⅱの入院3ヶ月の欄)

MRIなどの他覚的所見で異常がある場合
145万円(上の別表Ⅰの入院3ヶ月の欄)

入院3ヶ月・通院6ヶ月の慰謝料

MRIなどの他覚的所見で異常が無い場合(自覚症状のみ)
148万円(上の別表Ⅱの入院3ヶ月と通院6ヶ月が交差する欄)

MRIなどの他覚的所見で異常がある場合
211万円(上の別表Ⅰの入院3ヶ月と通院6ヶ月が交差する欄)

*入院した場合
事故の大きさなどにもよりますが、ムチウチで入院した場合は、入院が必要であったかについて保険会社ともめる可能性が高いです。そのような場合は、入院の必要性についての医学的な証明が必要になります。

打撲・ねんざ・キズの慰謝料

軽度か重度かによって金額が異なります。

  • 軽度
    上の別表Ⅱで計算します。
    他覚的所見で異常が無いムチウチと同じ計算になります。
  • 重度
    上の別表Ⅰで計算します。
    他覚的所見で異常があるムチウチと同じ計算になります。

上記以外のケガの慰謝料

ムチウチ・打撲・ねんざ・キズではないケガの慰謝料は、下の別表Ⅰの金額になります。

傷害慰謝料の別表1

通院1ヶ月の慰謝料

28万円(上の別表Ⅰの通院1ヶ月の欄)

通院3ヶ月の慰謝料

73万円(上の別表Ⅰの通院3ヶ月の欄)

通院6ヶ月の慰謝料

116万円(上の別表Ⅰの通院6ヶ月の欄)

入院1ヶ月の慰謝料

53万円(上の別表Ⅰの入院1ヶ月の欄)

入院3ヶ月の慰謝料

145万円(上の別表Ⅰの入院3ヶ月の欄)

入院3ヶ月・通院6ヶ月の慰謝料

211万円(上の別表Ⅰの入院3ヶ月と通院6ヶ月が交差する欄)

傷害慰謝料のよくある質問

傷害慰謝料についてのよくある質問について回答します。

リハビリの慰謝料の計算方法は?

リハビリの期間も入院期間や通院期間に含めて、慰謝料を計算します。
具体的には、入院中のリハビリであれば入院期間に含め、通院中のリハビリであれば通院期間に含めて、上の表によって計算します。

整骨院に通院した分も慰謝料を請求できますか?

整骨院に通院した場合も、その通院期間の慰謝料を請求できます。

ただし、病院への通院に比べると、整骨院への通院については、本当に必要だったのかとか、通いすぎではなかったかなど、保険会社が争ってくる可能性が高くなります(話し合いでまとまらない場合は裁判になります)。

ですので、整骨院に通院する場合は、事前に保険会社の了承を得ておきましょう。

なお、整骨院に通いすぎだから全額は払えないなどと後で保険会社が言い出さないように、保険会社が整骨院に施術費用を毎月遅れずに支払っているかを確認した方がよいでしょう。

可能であれば、整骨院に通うことを勧めるという医師の診断書(または意見書)がもらえると、後でもめたときに有利になります(ただし、医師がそのような診断書を書いてくれるとは限りません)。

詳しくは治療費のページをご覧ください

追突事故・もらい事故の慰謝料は高くなりますか?

追突事故などのもらい事故の場合、被害者に落ち度が全くありませんので、被害感情が強くなるのも当然だと思います。

しかし、傷害慰謝料を上の別表で計算するという点では、ほかの事故と変わりありません。

もっとも、計算した金額から過失割合分を差し引かれるということはありません。

過失割合について詳しくはこちら

主婦の慰謝料の計算方法は?

主婦や主夫の慰謝料も、上の別表で計算することに変わりはありません。

ただし、休業損害や逸失利益については、主婦や主夫の場合、会社員や個人事業主などとは計算方法が異なります。
詳しくは、以下のページをご覧ください。

・主婦や主夫がケガの治療のために家事ができなかった場合(休業損害)
家事従事者の休業損害のページ

・主婦や主夫に後遺症が残ったために将来の家事に影響がある場合(後遺症逸失利益)
家事従事者の後遺症逸失利益のページ

・主婦や主夫が亡くなったために家事ができなくなった場合(死亡逸失利益)
家事従事者の死亡逸失利益のページ

同乗者でも慰謝料を請求できますか?

同乗者であっても、同乗していた車の運転者の保険会社や相手の車の運転者の保険会社に対して、慰謝料などの賠償金を請求することができます。

ただし、運転者が親族の場合、運転者の任意保険会社からは対人賠償の保険金が支払われない可能性があります。

なぜなら、対人賠償保険は、通常、被害者が契約者の配偶者、父母、子である場合には保険金を払わないことになっているからです。

詳しくは保険会社に問い合わせて、約款(やっかん)を確認する必要があります(約款とは、保険会社が定めている契約内容です)。

このような場合、対人賠償保険ではなく、人身傷害補償保険や搭乗者傷害保険がついていれば、これらの支払いを受けましょう(ただし、対人賠償とは金額が異なる可能性があります)。

このページの執筆者
弁護士 深田茂人(大分県弁護士会所属、登録番号33161)
大分市城崎町の深田法律事務所代表。
弁護士歴15年、交通事故の相談を800件以上担当してきました。交通事故被害者と保険会社の情報格差をなくしたいと思い、当サイトにて執筆しています。