2021.12.06 更新

主婦などの家事従事者の死亡逸失利益

このページでは、家事従事者(主婦・主夫)の方が交通事故で亡くなられたために家事ができなくなった損失をお金に換算して保険会社に請求する際の計算方法について解説します。

計算方法

死亡逸失利益とは、交通事故で亡くなられたために稼ぐことができなくなったお金のことです。

主婦などの家事従事者は収入があるわけではありませんが、家事ができなくなった損失をお金に換算し、死亡逸失利益として保険会社に請求することができます

なぜなら、外部の人に頼めばお金がかかることから家事労働は金銭に換算することができるものと考えられます。
また、外部の人に頼まなくても、その分、結局は他の家族が代わりに家事をしなければならなくなるからです。

弁護士基準では、次の式によって金額に換算します。
弁護士基準とは、過去の裁判例に基づく計算方法であり、金額が最も高くなります。)

女性平均年収✕(1-生活費控除率)✕就労可能年数のライプニッツ係数

まず、「女性の平均年収」から「生きていたら本人が使ったであろう生活費」を差し引くことにより、家事労働を金銭換算した金額から本人の生活費を除いた1年分の金額を計算します。

そして、その金額に「生きていたら家事を続けたであろう年数(就労可能年数)のライプニッツ係数」をかけ算して死亡逸失利益の金額を算出します。

以下では、「年収」「生活費控除率」「就労可能年数のライプニッツ係数」の順に解説します。

年収

家事労働をお金に換算するために、弁護士基準では女性の平均年収を使用します。

女性の平均年収が使用される場合というのは、一般的な家族構成での家事負担が想定されています。

とはいえ、一般的な家族構成での家事負担が具体的にどのようなものかを想定するのは難しく、多くのケースで女性平均年収が使用されています。

ただし、一般的な家族構成での家事負担とは到底いえないケースでは、女性平均年収よりも増減された金額を年収として計算されることがあります。

*本サイトの慰謝料などの賠償金計算ツールでは、令和元年の女性の平均年収388万0100円で計算されます。

生活費控除率

生活費控除率とは、生きていたら本人が生活費に使った割合のことです。

家事従事者の場合は、30%で計算されるケースが多いです。

ただし、各家庭の状況によって変わる可能性があります。特に兼業の家事従事者で高収入の場合は、生活費控除率が高くなることがあります。

就労可能年数のライプニッツ係数

就労可能年数とは、生きていたら家事を続けたであろう年数のことです。

67歳までの年数とされるのが原則です。
ただし、高齢者の場合は平均余命までの2分の1の年数とされます。

ライプニッツ係数でかけ算をするのは、将来にわたって失われたお金(=金銭換算された家事労働)をすぐに請求するため金利を差し引く必要があるからです。
なお、民法が改正されたことにより、事故日が2020年3月31日以前の金利は年5%、2020年4月1日以後の金利は年3%とされていますので、それぞれのパーセンテージに応じたライプニッツ係数で計算することになります(たとえば20年の場合、5%のライプニッツ係数は12.4622、3%のライプニッツ係数は14.8775です)。

計算例

32歳の主婦が亡くなられた場合の弁護士基準による死亡逸失利益の計算は、次のとおりです。

388万0100円×(1-0.3)×21.4872=5836万739円

*「21.4872」は、35年(=67歳-32歳)のライプニッツ係数です(2020年4月1日以後の事故として、金利3%で計算しています)。

金額が増減する個別事情

上記の計算方法は、弁護士基準によるものです。

弁護士基準は、過去の裁判例に基づく目安や相場ですので、個別の事情によっては、金額が増減する可能性があります

弁護士基準の解説はこちら

以下では、金額が増減されやすい典型的なケースを解説します。

高齢の家事従事者の場合(減額の可能性)

家事労働をお金に換算するにあたって女性平均年収が用いられる場合というのは一般的な家族構成での家事負担が想定されています。

介護が不要の配偶者と2人暮らしをしていた高齢の家事従事者の場合では、女性の平均年収を減額した上で計算する裁判例が多くあります(女性高齢者の平均年収が用いられることもあります)。

事故前から家事を分担している人がいる場合(減額の可能性)

事故前から家事を分担している人がいる場合には、その分だけ本人は家事労働の負担がもともと少なかったことになります。

そこで、金銭換算する際もその分を差し引く必要があるため、女性平均年収を減額して計算されることがあります。

兼業の家事従事者(兼業主婦など)の場合

外でも働いている兼業の家事従事者の場合は、死亡のために家事ができなくなった損失を金銭換算した金額と外で稼げなくなった金額のいずれか高い方を死亡逸失利益として請求するのが一般的です。

具体的には、

家事従事者の死亡逸失利益の金額
=女性の平均年収✕(100%-生活費控除率)✕就労可能年数のライプニッツ係数・・・A

会社員の死亡逸失利益の金額
=年収✕(100%-生活費控除率)✕就労可能年数のライプニッツ係数・・・B

のAとBのいずれか高い方の金額を請求します。

会社員の死亡逸失利益の計算方法などについて、詳しくは会社員の死亡逸失利益のページをご覧ください(会社役員の場合は会社役員の死亡逸失利益のページ、個人事業主の場合は個人事業主の死亡逸失利益のページをご覧ください)。

なお、死亡のために家事と外の仕事の両方ができなくなったのだから、AとBを足した総額を請求するべきとも思えます。
確かに、それに近い考えの裁判例も少数ですが存在します。
しかし、多くの裁判例では、家事は24時間労働であるところ、その一部を割いて外で働いていると考えることにより、AとBのいずれか高い方のみを死亡逸失利益としています。

計算例

パート年収100万円の32歳主婦が亡くなられた場合の弁護士基準による死亡逸失利益の計算は、次のとおりです。

388万0100円×(1-0.3)×21.4872=5836万739円・・・A

100万円×(1-0.3)×21.4872=1504万1040円・・・B

A>Bなので、死亡逸失利益は5836万739円。

*「21.4872」は、35年(=67歳-32歳)のライプニッツ係数です(2020年4月1日以後の事故として、金利3%で計算しています)。

このページの執筆者
弁護士 深田茂人(大分県弁護士会所属、登録番号33161)
大分市城崎町の深田法律事務所代表。
弁護士歴15年、交通事故の相談を800件以上担当してきました。交通事故被害者と保険会社の情報格差をなくしたいと思い、当サイトにて執筆しています。