外国人の死亡逸失利益

更新日:2021年12月06日

執筆者:弁護士 深田 茂人

交通事故被害者が損をしないための情報を手軽に得られるように、「交通事故お役立ち手帳」サイトを運営・執筆しています。そのコンセプトに賛同する全国の交通事故に詳しい弁護士とともに、無料相談にも対応しています。弁護士歴18年、交通事故相談担当1000件以上、大分県弁護士会所属(登録No33161)。

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このページでは、外国人が交通事故で亡くなられた場合に、将来稼ぐはずであったお金(死亡逸失利益)を保険会社に請求する際の金額の計算について解説します。

外国人の場合は、死亡逸失利益の金額の計算にあたって、日本の物価や収入の水準をもとに計算すべきか、それとも、外国(出身国など)の物価や収入の水準をもとに計算すべきかが問題になります。

以下の3つの場合に分けて解説します。
  • 永住資格があった場合
  • 在留資格の更新が確実に認められた場合
  • 永住資格はなく在留資格の更新も確実に認められたとはいえない場合

永住資格があった場合

在留資格(ビザ)が「永住者」である場合、生きていれば、将来にわたって、日本で働いたであろうと考えられますので、日本の物価や収入の水準をもとに、死亡逸失利益の計算をします。
つまり、日本人と同じ計算をします。

在留資格の更新が確実に認められた場合

在留資格の更新が確実に認められた場合、生きていれば、将来にわたって、日本で働いたであろうと考えられますので、日本の物価や収入の水準をもとに、死亡逸失利益の計算をします。
つまり、日本人と同じ計算をします。

どのような場合に在留資格の更新が確実に認められたといえるか

以下の各要素を考慮して、在留資格の更新が確実に認められたかが、個別のケースごとに検討されることになります。

  • 来日目的
  • 事故の時点における本人の意思
  • 在留資格の内容
  • 過去の在留期間の更新の実績
  • 将来、在留期間の更新が見込めたか(素行が不良でなかったか、独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有していたか、雇用・労働条件が適正であったか、納税義務を履行していたか、入管法に定める届出等の義務を履行していたかなどにより判断されます)
  • 過去の生活や仕事の実態

一般的には、在留資格(ビザ)が「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」の場合は、在留資格の更新が確実に認められたとされる可能性が高いといえます。

そのほかの在留資格の場合は、上記の各要素をより詳細に検討して、在留資格の更新が確実に認められたといえるかが判断されることになります。個別の判断が必要ですので、弁護士に相談することをお勧めします。

最高裁判所平成9年1月28日判決
「予測される我が国での就労可能期間ないし滞在可能期間内は我が国での収入を基礎とし、その後は想定される出国先(多くは母国)での収入等を基礎として逸失利益を算定するのが合理的ということができる。そして、我が国における就労可能期間は、来日目的、事故の時点における本人の意思、在留資格の有無、在留資格の内容、在留期間、在留期間更新の実績及び蓋然性、就労資格の有無、就労の態様等の事実的及び規範的な諸要素を考慮して、これを認定するのが相当である。」

永住資格はなく在留資格の更新も確実に認められたとはいえない場合

将来にわたって、ずっと日本で働いたであろうとは考えられないため、日本で働くことを予定していた期間の経過後は、日本国外で働くものとして計算をする必要があります。

通常は、出身国の物価や収入の水準をもとに、死亡逸失利益の計算をします。

もっとも、出身国の物価や収入の水準などの資料を集めることや、それをもとに計算することは、とても難しく、専門性を要します。弁護士に相談することをお勧めします。

電卓を持つ弁護士
本サイトの慰謝料などの賠償金自動計算機では、永住資格はなく在留資格の更新も確実に認められたとはいえない場合は個別の判断が特に必要なため、「要弁護士相談」としています。

誰がどの割合で相続するかは本国法で決まる

外国人の死亡逸失利益の計算方法は、上記のとおりです。

また、死亡逸失利益以外の賠償金も計算する必要があります。どのような賠償金を加害者側の保険会社に請求できるかについては、慰謝料などの賠償金のページをご覧ください。

このようにして、計算された賠償金を、誰がどの割合で相続するかは、亡くなった外国人が国籍をもっていた国の法律(本国法)で決められます(法の適用に関する通則法36条)。

このページの執筆者
弁護士 深田茂人

弁護士 深田茂人
大分県弁護士会所属
登録番号33161

大分市城崎町の深田法律事務所代表。
弁護士歴18年、交通事故の相談を1000件以上担当してきました。交通事故被害者と保険会社の情報格差をなくしたいと思い、当サイトにて執筆しています。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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