2021.09.07 更新

その他費用(個別の事情がある場合に請求するお金)

車いす

「治療費や慰謝料以外に、どのようなお金を請求できるんだろう?」
「交通事故に関係して●●の出費をしたけど、保険会社に請求できるのだろうか?」
「将来、出費する可能性のあるお金も請求できるのかな?」

どのようなお金を加害者側の保険会社に請求できるのかが分からずに、ご相談に来られる方は多くいらっしゃいます。

交通事故で請求できるお金には、次の2つがあります。
  1. 治療費や慰謝料などのように請求するのが一般的なお金
  2. 個別の事情がある場合に請求するお金(その他費用

上記1の請求するのが一般的なお金については慰謝料などの賠償金についてのページをご覧ください。

このページでは、上記2のその他の費用として請求できるお金について、くわしく解説します。

請求できるかの線引きは「事故との因果関係」

交通事故で請求できるお金は、事故との因果関係があるものに限られます。

事故との因果関係があるものとは「実際の交通事故の状況から常識的に考えて必要な出費」のことです。

そのような出費であれば、保険会社に請求することができます。

では、「常識的に考えて必要な出費」であるかは誰が決めるのでしょうか。

それは、被害者と保険会社が話し合って決めます。

しかし、話し合いで決まらない場合は、裁判で裁判官が決めます。

では、保険会社に支払いを求めるお金はどのように選別したらよいでしょうか。

交通事故との関係があまりに薄いものは除いた方がよいでしょうが、基本的には、交通事故と関係する出費はいったん全て支払いを求めてよいと思います。

そして、それらが「常識的に考えて必要な出費」といえるかを保険会社と話し合って、譲れるものであれば外していくことをおすすめします。

なお、領収書が無い出費については請求できない可能性が高くなりますので、領収書はしっかりと保管し、何の出費かをメモしておきましょう。

以下、具体的な出費の例をあげて、説明します(以下の例のほかにも、事故との因果関係のあるものは請求できます)。

装具・器具購入費

車いす、義足、コルセット、サポーター、めがね、コンタクトレンズ、義眼、補聴器、入れ歯、かつら、介護ベッド、身障者用パソコン、盲導犬費用、その他の医療器具などです。

必要と認められる場合は、その購入費用を請求できます。

また、将来、購入する必要があるものについても、その分の費用の請求をすることができます(ただし、将来の購入費用を現在請求する場合は、利息分を差し引く計算をする必要があります)。

宿泊費

被害者が重度のケガを負い、その介助のために近親者が病院近くのホテルなどに宿泊することがやむをえないと認められる場合は、その費用を請求できます。

また、極めて専門性が高い治療を受けるために遠方の病院に通う必要がある場合などでは、被害者がその病院の近くで宿泊したホテル代などを請求できる可能性があります。

通院以外の交通費

通勤や通学、買い物などの際に、事故前であれば使わなかった交通手段(タクシーなど)を使うことが、ケガの部位や程度、交通の便などを考慮して、やむをえない場合は、その分の交通費を請求することができます。

タクシー等の利用にあたっては、事前に保険会社の了承を得ておきましょう。

また、事故の関係で警察署に出頭する際にかかった交通費については、捜査に協力するのは国民の義務であることを理由に、保険会社に請求することはできないとの考え方もあります。
しかし、その義務を負担するに至ったのは事故が原因であるとして、交通費の請求を認めた裁判例も多くあります(東京地方裁判所の平成24年12月21日判決など)。
このような裁判例があることを伝えて、保険会社と交渉をするべきでしょう。

家族の交通費

お見舞いのための交通費と、お世話が必要なために入通院に付き添った際の交通費に分けて、解説します。

家族のお見舞いのための交通費

数ヶ月以上の入院を要するほどの大けがをした場合や危篤状態になった場合などは、家族のお見舞いのための交通費を請求できる可能性が高いです。

回数については、被害者の回復状況に応じて、常識的な範囲内に限られるでしょう。

なお、タクシー代などの公共交通機関以外の交通費が請求できるのは、被害者が危篤のために急いで駆けつける必要があった場合などに限られます。

お世話が必要なために付き添った際の交通費

以下のいずれかのようなケースで、被害者の入通院中に、食事、着替え、歩行などのお世話をするために近親者が付き添う必要があった場合、付き添いのために要した交通費を請求できます。

  • 被害者の年齢が12歳以下
  • 多数の箇所の骨折
  • 脳や脊髄の損傷
  • 医師が付き添いの指示をした

なお、交通費だけではなく、付き添いの負担をお金に換算した入通院付き添い費も請求できます。
詳しくは、入通院付き添い費のページをご覧ください。

教育関係費

具体的には、以下のようなものが考えられます。

  • ケガによる学習の遅れを取り戻すための塾代や家庭教師代など
  • ケガによって無駄になった支払済みの授業料や通学定期代など
  • ケガで留年したことにより支払った授業料など
  • 被害者が子の世話をできなくなったために必要となった保育料など

被害者のケガの程度、子の年齢、家族構成などから、常識的に考えて必要な出費といえるものであれば、請求することができます。

旅行のキャンセル料

交通事故のために、ケガをした被害者やその近親者が予定していた旅行をキャンセルした場合には、そのキャンセルがやむをえないと認められるものであれば、キャンセル料を請求することができます。

ペットを預ける費用

被害者がケガをして、ペットの世話ができなくなり、ペットホテルなどにペットを預けることがあります。
ペットを預けることがやむをえないと認められる場合には、相当といえる範囲の金額であれば、その費用を請求することができます。

特別室料(個室料、差額ベッド代)

以下のいずれかにあてはまる場合に、特別室料を請求できます。

  • 医師の指示がある
  • 症状が重篤(大部屋では感染しやすいなど)
  • 通常の大部屋が空いていなかった

医師等に対する謝礼

医師や看護師等に対する謝礼については、最近の裁判例では、請求が認められたものは多くありません。
なぜなら、医師等へ謝礼をするのが当たり前と考えるのは社会通念上相当とまではいいがたく、特に公的な医療機関では賄賂になる可能性すらあるものだからです。
ただし、特に尽力してくれたというような事情があるケースでは、請求できる可能性もあります。

家屋・自動車などの改造費

重度の後遺障害が残り、家屋や自動車などの改造が必要と認められる場合には、改造費の請求ができます。

ただし、被害者以外の家族にも利益が生じる場合(家族も自動車を使用するなど)や、資産として残る分がある場合などは、実際の購入費からその分の利益を差し引いた金額しか請求できない可能性があります。

なお、将来、継続して購入する必要があるもの(障害者仕様の自動車など)は、将来分も請求できます。

引越料

被害者が亡くなった場合や、重度の後遺障害のために近親者の世話を要する場合など、引越しをすることがやむをえないことがあります。
そのような場合には、引越料の請求ができます。

在宅付添費(退院日から症状固定日までの間)

身体の障害が特に重く、退院後、症状固定日までの間、自宅で介護をする必要があった場合、在宅付添費の請求ができます。

金額が定額化されていませんので、弁護士に相談することをお勧めします。

なお、症状固定後の介護に要する費用については、将来の介護費用として請求します。

成年後見等関係費

事故の後遺症のために、成年後見、保佐、補助となった場合、家庭裁判所への申立費用や後見人等への報酬などにかかったお金を請求することができます。

将来の治療費(症状固定後の治療費)

症状固定後の治療費の請求は、原則として認められません。
なぜなら、症状固定とは、治療の効果が無くなり、症状が変わらなくなったことをいうからです。

しかし、以下のケースなどでは、症状固定後の治療費の請求が例外的に認められる可能性があります。

  • 症状の悪化を防ぐために、継続した治療が必要なケース
  • 将来、再手術をしなければならないケース

将来の通院費

以下のケースなどでは、症状固定後の通院費の請求が例外的に認められる可能性があります。

  • 症状の悪化を防ぐために、継続した通院が必要なケース
  • 将来、再手術のために通院をしなければならないケース

将来の雑費

重度の後遺障害が残った場合には、紙おむつや薬剤などの各種用品を継続して必要とすることがあります。
このようなケースでは、過去に実際にかかった費用をもとに、将来かかるであろう費用を推測して、その金額を請求することになります。

調査・立証費用

具体例としては以下のようなものがあります。

  • 刑事記録を捜査機関から取得する費用
  • 事故態様を調べるために交通事故工学の専門家に鑑定を依頼した費用
  • 医師と面談して説明を受けるための費用
  • 医師に意見書を書いてもらう費用

これらによって得た資料が実際に役に立ったといえる場合(ある事実を証明できた場合など)には、かかった費用を請求できる可能性が高くなります。

弁護士費用

交通事故の加害者側保険会社に対する賠償請求について、弁護士に依頼をした場合、弁護士費用も請求することができます。
請求できる金額は、裁判例では、賠償金額の1割程度とされることが多いです。

ただし、裁判ではなく、話し合い(示談)の場面では、保険会社は、弁護士費用の支払いに応じようとしないことが多いです。
そのような場合に、弁護士費用を請求するのであれば、裁判をするのが最も効果的です。

遅延損害金

事故から支払時までの金利分も請求することができます。
事故が2020年4月1日~2023年3月31日に発生した場合、金利は年3%です。
事故が2020年3月31日以前に発生した場合、金利は年5%です。

ただし、裁判ではなく、話し合い(示談)の場面では、保険会社は、遅延損害金の支払いに応じようとしないことが多いです。
そのような場合に、遅延損害金を請求するのであれば、裁判をするのが最も効果的です。

このページの執筆者
弁護士 深田茂人(大分県弁護士会所属、登録番号33161)
大分市城崎町の深田法律事務所代表。
弁護士歴15年、交通事故の相談を800件以上担当してきました。交通事故被害者と保険会社の情報格差をなくしたいと思い、当サイトにて執筆しています。