2021.11.17 更新

後遺症が複数ある場合の後遺障害等級

たとえば、手と足にそれぞれ後遺症が残ったケースのように、複数の後遺症がある場合、後遺障害等級がどのように決められるのかについて解説します。
相談者(困り顔)

後遺症が1つだけではない場合、等級はどのように決まるのですか?

弁護士

1つだけの場合よりも等級が上がります。いくつ上がるかについてはルールがあります。

後遺症が複数ある場合の「等級を上げるルール」があります

後遺症は1つのみの場合より、複数ある場合の方が生活への影響は大きいといえます。

そのため、以下の場合分けにしたがって、等級が繰り上げられます。

1~5級の後遺症が2つ以上ある場合

この場合は、最も重い等級を3級繰り上げます

たとえば、4級の後遺症と5級の後遺症がある場合は、最も重い4級を3級繰り上げて、1級となります。

5級の後遺症が2つと、7級の後遺症が1つある場合は、最も重い5級を3級繰り上げて、2級となります。

なお、繰り上げにより1級を超える場合は、1級のままです。

1~5級の後遺症は2つ以上ないが、1~8級の後遺症が2つ以上ある場合

この場合は、最も重い等級を2級繰り上げます

たとえば、4級の後遺症と8級の後遺症がある場合は、最も重い4級を2級繰り上げて、2級となります。

6級、7級、8級、12級の4つの後遺症がある場合は、最も重い6級を2級繰り上げて、4級となります。

1~8級の後遺症は2つ以上ないが、1~13級の後遺症が2つ以上ある場合

この場合は、最も重い等級を1級繰り上げます

たとえば、4級の後遺症と13級の後遺症がある場合は、最も重い4級を1級繰り上げて、3級となります。

8級、11級、13級の後遺症が3つある場合は、最も重い8級を1級繰り上げて、7級となります。

14級はいくつあっても等級を繰り上げることはありません。

「等級を上げるルール」は複数回適用されます

右肩上がり

しかし、等級を上げるルールを1回しか適用しないとすると、「重い方から3つ目以下の後遺症は、常に無視される」という不都合が生じてしまいます。

たとえば、6級と7級の後遺症が2つある場合は、最も重い6級を2級繰り上げることにより、4級となります。

しかし、6級と7級と8級の後遺症が3つある場合も、最も重い6級を2級繰り上げることにより、4級となりますので、重い方から3つ目の8級の後遺症は、等級を上げるルールを1回適用しただけでは、無視されるという不都合が生じてしまいます。

そこで、等級を上げるルールは、相乗効果によって生活への影響が大きくなる関係にある後遺症ごとに、複数回適用されることになっています(そのような関係にない後遺症については、等級を上げるにあたって無視される結果になることがあります)。

具体的には、以下の順に、等級を上げるルールが複数回にわたって適用されて、等級が上げられます。

  1. まず、等級を上げるルールを「部位と内容が同じである後遺症」に適用する。
  2. 次に、「同じグループの後遺症」に適用する。
  3. 最後に、他の後遺症も合わせて適用する。

以下、1~3の順に解説します。

*本サイトの慰謝料などの賠償金自動計算機の「自分で等級を調べる」では、このような等級を上げるルールを適用して全身の等級を計算しています。最終的な等級の判断をする場合は弁護士に相談してください。

まず、「部位と内容が同じ後遺症」で等級を上げます

部位と内容が同じ後遺症が複数ある場合、それらの後遺症どうしの相乗効果によって生活への影響が大きくなります。

そこで、まずはこれらの後遺症に、等級を上げるルールを適用します。

たとえば、右ひじが動かしづらい後遺症と右手首が動かしづらい後遺症の2つがある場合、後遺症の部位は「右腕」、後遺症の内容は「動かしづらい」でともに同じです(2つの相乗効果により右腕をより動かしづらくなります)。

そして、右ひじの動かせる範囲が2分の1以下で10級、右手首の動かせる範囲も2分の1以下で10級の場合には、等級を上げるルールを適用し、10級を1級繰り上げて、9級となります。

*このサイトの慰謝料などの賠償金自動計算機の「自分で等級を調べる」では、部位と内容が同じ複数の後遺症のうち、典型的なものについては、予め等級を繰り上げた上で「後遺症の程度(等級)」に加えられています。そのため、あてはまるものを選択するだけで繰り上げ処理済みの等級が表示されます。ただし、典型的でないものは「後遺症の程度(等級)」に入っていませんので、「非典型後遺症」を選択してください(「要弁護士相談」と表示されます)。弁護士に相談した上で最終的な等級の判断をしてください。

次に、「同じグループの後遺症」で等級を上げます

部位または内容が異なる後遺症どうしであっても、相乗効果によって生活への影響が大きくなるものがあります。

そのような後遺症どうしは「同じグループの後遺症」として、等級を上げるルールが適用されます。

「同じグループの後遺症」とされているのは、以下の1~5のいずれかです。

  1. 目の視力低下、ピントが合わない、複視や眼球を動かしづらい、視野が狭くなった
  2. 右肩・ひじ・手首を動かしづらい、右手指を失った後遺症または右手指を動かしづらい
  3. 左肩・ひじ・手首を動かしづらい、左手指を失った後遺症または左手指を動かしづらい
  4. 右股・ひざ・足首を動かしづらい、右足指を失った後遺症または右足指を動かしづらい
  5. 左股・ひざ・足首を動かしづらい、左足指を失った後遺症または左足指を動かしづらい

たとえば、(ⅰ)右ひじの動かせる範囲が2分の1以下、(ⅱ)右手首の動かせる範囲が2分の1以下の場合、(ⅲ)右手の中指の根元の動かせる範囲が2分の1以下の3つの後遺症がある場合を考えてみましょう。

さきほど述べましたとおり、最初に「部位と内容が同じ複数の後遺症」である(ⅰ)右ひじの動かせる範囲が2分の1以下の後遺症(10級)と(ⅱ)右手首の動かせる範囲が2分の1以下の後遺症(10級)について、等級を上げるルールを適用して、9級となります。

次に、上記2のとおり、右肩・ひじ・手首を動かしづらい後遺症と右手指を動かしづらい後遺症は「同じグループの後遺症」ですので、(ⅲ)右手の中指の根元の動かせる範囲が2分の1以下の後遺症(12級)とさきほど繰り上げた9級に等級を上げるルールを適用して、8級となります。

最後に、他の後遺症も合わせて等級を上げます

最後に、他の後遺症も合わせて等級を上げるルールを適用します。

たとえば、(ⅰ)右ひじの動かせる範囲が2分の1以下、(ⅱ)右手首の動かせる範囲が2分の1以下の場合、(ⅲ)右手の中指の根元の動かせる範囲が2分の1以下、(ⅳ)背骨の圧迫骨折の4つの後遺症がある場合を考えてみましょう。

さきほど述べましたとおり、(ⅰ)右ひじの動かせる範囲が2分の1以下、(ⅱ)右手首の動かせる範囲が2分の1以下、(ⅲ)右手の中指の根元の動かせる範囲が2分の1以下の3つの後遺症について、等級を上げるルールが2回適用されて、8級となります。

そして、(ⅳ)背骨の圧迫骨折(11級)と8級に等級を上げるルールを適用して、7級となります。

等級が上がらないケース

ただし、以下のようなケースでは、等級を上げるルールは適用しません。

等級の「序列」を乱す場合

等級の「序列」を乱すことになる場合、等級を上げるルールを適用してはならないとされています。

そもそも等級は、後遺症の程度によって決められています。

そのため、等級を上げるルールを適用した結果、もともと決められている等級よりも軽いはずなのに上位の等級になってしまったり、重いはずなのに下位の等級になってしまったりすることは許されません。

たとえば、親指以外の2指の根元の動かせる範囲が2分の1以下の場合は10級、親指以外の2指を失った場合は9級と決められています。

そして、右手の中指の根元の動かせる範囲が2分の1以下の後遺症(12級)と、小指を失う後遺症(12級)が残った場合、等級を上げるルールを適用すると、12級が2つになるので、11級として扱われることになりそうなのですが、親指以外の2指の根元の動かせる範囲が、2分の1以下の場合で決められている10級よりも重く、親指以外の2指を失った場合で決められている9級よりも軽いことは明らかです(指は動かしづらいよりも失った方が後遺症は重いから)。

そこで、決められている等級の「序列」を乱さないように、この場合には等級を上げるルールが修正されて、10級として扱われることになります。

このように、等級の「序列」を乱さないという修正は個別に判断する必要があります。

電卓を持つ弁護士
本サイトの慰謝料などの賠償金自動計算機の「自分で等級を調べる」では、等級の序列を乱す可能性がある場合は個別の判断が特に必要なため、「要弁護士相談」としています。

ある後遺症に通常伴う後遺症の場合

たとえば、鎖骨が変形した後遺症がある場合、その変形した部位に痛みの後遺症を伴うのが通常です。

そのような場合は、鎖骨の変形の後遺症として12級が認定されるのみで、痛みの後遺症としては等級が認定されることはありません。

なぜなら、鎖骨が変形した場合は、その部位に痛みを伴うのが通常であることから、鎖骨の変形として認定される12級には、痛みの後遺症の分も含まれているためです。

このように、ある後遺症に通常伴う後遺症がある場合は、それらの後遺症の各等級のうち、いずれか重い方の等級のみが認定されます。

保険会社は、このようなケースを「通常派生する関係」にある後遺症と表現しています。

ある後遺症に通常伴う後遺症の例には、以下のようなものがあります。

  • 「やけどによる醜状の後遺症」に通常伴う「痛みの後遺症」
  • 「歯が欠けた後遺症」に通常伴う「咀嚼・嚥下困難、言語不明瞭の後遺症」
  • 「ろく骨変形の後遺症」に通常伴う「呼吸器(肺)の障害」
  • 「CRPS(特殊な痛み)の後遺症」に通常伴う「関節を動かしづらい後遺症」

*本サイトの慰謝料などの賠償金自動計算機の「自分で等級を調べる」をご利用する際に、ある後遺症に通常伴う後遺症を選択した場合は、上記の例のように典型的なケースでは、いずれかの後遺症の削除を求める表示がなされますので、その表示に従って削除してください。もっとも、典型的でないケースと考えられる場合は、弁護士に相談する必要がありますので、弁護士に相談した上で最終的な等級の判断をしてください。

1つの後遺症が見方によって2つの後遺症と捉えられる場合

たとえば、太ももの骨が曲がって変形した後遺症がある場合、その曲がった分だけ脚が短くなる後遺症もあります。

このように、後遺症としては骨が曲がったことの1つのみですが、見方によって「太ももの骨が変形した後遺症」と「脚が短くなった後遺症」の2つの後遺症があると捉えられる場合があります。

このような場合、あくまで後遺症は1つしかないので、2つの後遺症の各等級のうち、いずれか重い等級のみが認定されます

1つの後遺症が見方によって2つの後遺症と捉えられる例には、「骨盤骨変形の後遺症」と「脚が短くなった後遺症」があります。

*本サイトの慰謝料などの賠償金自動計算機の「自分で等級を調べる」をご利用する際に、1つの後遺症が見方によって2つの後遺症と捉えられるケースでそれら2つの後遺症を選択した場合は、上記の例のような典型的なケースは、いずれかの後遺症の削除を求める表示がなされますので、その表示に従って削除してください。しかし、典型的でないケースと考えられる場合は、弁護士に相談する必要がありますので、弁護士に相談した上で最終的な等級の判断をしてください。

このページの執筆者
弁護士 深田茂人(大分県弁護士会所属、登録番号33161)
大分市城崎町の深田法律事務所代表。
弁護士歴15年、交通事故の相談を800件以上担当してきました。交通事故被害者と保険会社の情報格差をなくしたいと思い、当サイトにて執筆しています。