2021.04.09 更新

無職・失業中の方の後遺症逸失利益

このページでは、無職・失業中の者の後遺症逸失利益について解説します。後遺症逸失利益とは後遺症のために稼ぎにくくなったお金のことです(後遺障害逸失利益ともいいます)。
失業者

失業中に交通事故でケガをして後遺症が残ったのですが、仕事への影響が心配です。

弁護士

高齢などで将来的に就職する可能性がない場合を除いて、後遺症逸失利益を請求できることが多いです。

後遺症逸失利益を請求できるのか

無職・失業中の方であっても、高齢などで将来的に就職する可能性がない場合を除いて、後遺症逸失利益を請求できるのが一般的です。
なぜなら、事故時には無職であっても、将来的に就職する可能性が高いのであれば、後遺症により将来にわたって稼ぎにくくなるお金が生じると考えられるからです。

どのように計算するのか

後遺症逸失利益の金額の計算方法は次のとおりです。

年収✕後遺症のために稼ぎにくくなった割合(労働能力喪失率)✕後遺症が仕事に影響する年数(労働能力喪失期間)のライプニッツ係数

まず、「年収」に「後遺症のために稼ぎにくくなった割合(労働能力喪失率)」をかけ算して、1年分の稼ぎにくくなった金額を計算します。さらに、その金額に「後遺症が仕事に影響する年数(労働能力喪失期間)のライプニッツ係数」をかけ算して後遺症逸失利益の金額を算出します。
年数ではなくライプニッツ係数でかけ算するのは、将来稼げるはずだったお金をすぐに請求するため金利を差し引く必要があるからです。

以下では「年収」「労働能力喪失率」「労働能力喪失期間のライプニッツ係数」の順に解説します。

年収

事故当時は無職ですので、計算する際の「年収」をどのように決めるかが問題となります。

一般的には、失業前の年収の推移、年齢、職歴、学歴、資格や技能などを考慮して個別に決める必要があります。

そのため、保険会社と話し合う際には、失業前数年分の源泉徴収票(ない場合は所得証明書)、職歴、学歴、資格などを証明する資料を保険会社に提出することが有効です。

仮に上手く話し合いができなかったとしても、それらの資料は裁判でそのまま証拠として使うことができます。保険会社と金額の話し合いができない場合は、裁判で裁判官が金額を決めることになります。

電卓を持つ弁護士
本サイトの慰謝料などの賠償金自動計算機では、将来的に就職する可能性があった場合、年収をいくらで計算するかについて個別の判断が特に必要なため、「要弁護士相談」としています。

労働能力喪失率

後遺症のために稼ぎにくくなった割合を労働能力喪失率といいます。
裁判官が目安にするといわれる後遺障害等級ごとの割合は以下のとおりです。

【労働能力喪失率の目安】
1~3級:100% 4級:92% 5級:79% 6級:67% 7級:56% 8級:45% 9級:35% 10級:27% 11級:20% 12級:14% 13級:9% 14級:5%

労働能力喪失期間のライプニッツ係数

後遺症が仕事に影響する年数を労働能力喪失期間といいます。
67歳までの年数とされるのが原則です。ただし、高齢者の場合は平均余命までの2分の1の年数とされます。

年数ではなくライプニッツ係数とするのは、将来稼げるはずだったお金をすぐに請求するため金利を差し引く必要があるからです。
なお、民法が改正されたことにより、事故日が2020年3月31日以前の金利は年5%、2020年4月1日以後の金利は年3%とされていますので、それぞれのパーセンテージに応じたライプニッツ係数で計算することになります(たとえば25年の場合、5%のライプニッツ係数は14.0939、3%のライプニッツ係数は17.4131です)。

金額が増減する個別事情

上記の計算方法は、裁判官が裁判で後遺症逸失利益の金額を決めるにあたって目安にするといわれる弁護士基準によるものです。
あくまで目安ですので、個別の事情によっては金額が増減します。

以下では金額が増減しやすい典型的なケースを解説します。

将来就職する可能性の高い仕事の内容が後遺症の影響を受けやすい場合(増額の可能性)

将来就職する可能性の高い仕事の内容と後遺症の内容によっては、後遺症が仕事に影響しやすいケースがあります。

たとえば、片手の人差し指の末端の関節が動かない後遺症の後遺障害等級は14級ですので、労働能力喪失率の目安は5%です。
しかし、将来就職する可能性の高い仕事の内容がピアノ演奏である場合は5%よりもっと仕事に影響があると考えられ、より高額の後遺症逸失利益が認められる可能性があります。

ただし、そのような仕事に将来就職する可能性が高いことを、事故前の職歴や資格、技能などによって具体的に証明する必要があります。

将来就職する可能性の高い仕事の内容が後遺症の影響を受けにくい場合(減額の可能性)

将来就職する可能性の高い仕事の内容と、後遺症の内容によっては、後遺症が仕事に影響しにくいケースもあります。そのようなケースでは、弁護士基準よりも低額となる可能性があります。

以下は、仕事に影響しにくいとされやすい後遺症の典型例です。仕事の内容にもよりますが、弁護士基準とおりの金額が認められなかったり、後遺症逸失利益が0円とされたりする可能性もあります。弁護士に相談することをおすすめします。

・傷あと・やけど(醜状)
・耳が欠けた
・鼻が欠けた
・まぶたが欠けた
・歯が欠けた
・臭いを感じにくい
・鎖骨の変形

後遺症が長くは残らないと考えられる場合(減額の可能性)

後遺症が長くは残らないと考えられる場合、後遺症が仕事に影響する年数(労働能力喪失期間)が短く計算されて、金額が低くなる可能性があります。

典型的な例はムチウチです。ムチウチの後遺症では労働能力喪失期間が、後遺障害等級12級の場合は10年、14級の場合は5年とされやすいです。
また、痛みの後遺症も同じように労働能力喪失期間が短くされることが比較的多くあります

定期払いが認められる可能性

上記の計算方法は後遺症逸失利益を一括で支払ってもらう場合のものです。
このような一括払いではなく、将来にわたって定期的に支払ってもらう定期払いの方法を被害者が選択した場合は、定期払いが認められる可能性があります(最高裁判所令和2年7月9日判決)。

定期払いを選択すべきか、仮に選択した場合に認められるかについては、弁護士に相談することをおすすめします。

このページの執筆者
弁護士 深田茂人(大分県弁護士会所属、登録番号33161)
大分市城崎町の深田法律事務所代表。
弁護士歴15年、交通事故の相談を800件以上担当してきました。交通事故被害者と保険会社の情報格差をなくしたいと思い、当サイトにて執筆しています。