2021.04.09 更新

交通事故後の警察への対応

パトカー

このページでは、交通事故後に警察に対してとるべき対応について解説します。

交通事故の直後すぐにすべき対応はこちら

すぐに110番通報

交通事故を起こしたときは、すぐに必ず110番に電話して警察に通報しましょう。

以下のとおり、警察への届け出を怠ると刑罰(3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金)を科せられることになります。

道路交通法第72条1項の抜粋
「車両等の交通による人の死傷又は物の損壊があつたときは・・・当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。」

道路交通法第119条10号の抜粋
「次の各号のいずれかに該当する者は、三月以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
十 第七十二条第一項後段に規定する報告をしなかった者」

警察が110番通報を受理してから現場に到着するまでにかかる時間は、事故現場や交通状況によって異なると考えられますが、平均が約7分とされています(警察白書による)。

警察への届け出を怠ると、刑罰を科せられるだけでなく、保険金を請求する際に必要となる「交通事故証明書」の発行を受けられなくなります。
つまり、ケガの治療費や車の修理代、慰謝料などの賠償金が保険会社から支払われなくなってしまいます。

なお、加害者から「警察には届けないでほしい」と頼まれるケースがあります。
免許の停止・取消を恐れたり、業務中の事故の場合に会社に知られたくないなどの動機が加害者にあるような場合です。
しかし、「法律で届けなければならないことになっていますので・・・」と伝え、丁重にお断りしてください。
なぜなら、保険金請求ができなくなったり、事故態様を証明することができなくなったりする可能性があり、そのリスクを負うのは被害者だからです。

警察が到着するまでの準備

警察が到着するまでの間は、事故が起きた時間、自分と相手の動きやスピード、信号の表示などを確認しておき、警察が到着したら、正確に報告できるように準備しておきましょう。

また、目撃者がいたら、警察が来るまで現場に残るようお願いしましょう。それが難しい場合は、連絡先を聞いておきましょう。

交通事故の相手と言い争うのはやめておきましょう。
互いの主張を直接ぶつけ合ってしまうと、感情的になって収拾がつかなくなるおそれがあります。
それよりも、警察に伝えるべきことを準備しておいた方がよいでしょう。

また、相手と示談の話をするのも禁物です。
交通事故の示談をするにあたっては専門的な知識が必要であり、焦って示談の話をすると不利になってしまう危険があるからです。

警察が到着してからの対応

警察官に対してとるべき対応について解説します。

実況見分

実況見分とは、交通事故の現場において、どのような事故がどのような原因で発生したのかを記録するものです。

事故当事者に立ち会ってもらい、現場に残された物的証拠を確認しながら、警察が記録します。
事故当日に行われることが多いですが、日を改めて後日行われることもあります。

ケガの状態によっては、実況見分に立ち会えないこともあります。
その場合には、後日、警察官が病院などに赴くなどして、聴取を行います。

実況見分によって作られる実況見分調書は、刑事裁判のみならず民事裁判や示談交渉の際の重要な証拠になりますので、実況見分の立ち会いや聴取には必ず応じるようにしてください。

実況見分調書の記載内容

実況見分調書の記載内容は以下のとおりです。

  • 実況見分をした日時
  • 立会人の氏名
  • 立会人の指示説明(最初に相手を発見した地点、危険を感じた地点、ブレーキを踏んだ地点、衝突した地点などについての立会人の指示・説明)
  • 事故の発生日時・場所
  • 事故車の状況(衝突の部位・状況、車両番号など)
  • 現場道路の状況(交通規制、見通し、明るさなど
  • 事故時の天候

これに図面や写真が添付されることが多いです。

記憶に反する調書には同意しない

実況見分調書は、刑事裁判のみならず民事裁判や示談交渉の場面でも、事故態様や過失割合などの証拠として、きわめて重要なものです。

ですので、記憶と異なることを警察官に言われたら、「それは違います」とはっきり否定しなければなりません

ところが、被害者と加害者の主張が食い違うと、警察官がどちらかまたは双方に「その主張はおかしい。」と言ってくることがあります。
被害者と加害者の主張が食い違っていると、警察官は、どちらの主張が正しいのかを調べなければならなくなり、手間が生じます。
そこで、できるだけその手間を省けるように、まずは当事者に主張がおかしいのではないかと確認してくるのです。
警察官によってはその確認が強引と思われるケースもあります。

しかし、事故当事者の主張が異なるなら、どちらの主張が正しいのかを調べるのは警察の仕事です。
警察の手間になるからといって、事故当事者が記憶と違う事実を認めていいはずはありません。
そのようなことをすれば、真実と異なることを前提に、その後の民事・刑事手続きが進んでしまうことになってしまいます。

記憶と異なる事実は絶対に認めないようにしなければなりません。

同様に、事故後しばらくして、あなたの話を警察がまとめた供述調書にサインを求められますが、これにも記憶と異なる部分があったらサインをしてはいけません。
あなたの記憶と違う部分がないか十分に確認してください。
記憶と違う部分があったらサインをする前に必ず訂正してもらいましょう。
サインをしてしまうと、その供述調書を書きかえてもらうのは、かなり困難になってしまうので、注意しなければなりません。

人身事故と物損事故のちがい

人身事故とは、交通事故によって、人が亡くなったり、ケガをした場合の事故のことです。

人身事故の場合、自動車運転処罰法違反などの犯罪にあたる可能性があるので、警察は、刑事裁判を視野にいれた捜査をします。
そのため、事故態様について、実況見分調書や供述調書などの詳細な証拠が作られます。

他方、物損事故とは、交通事故によって、死傷した人がおらず、物損のみの事故のことです。

物損事故の場合、簡単な物件事故報告書は作られますが、実況見分調書と比べて具体性や正確性に欠けることは否めません。

事故後にわずかでも体調の変化があったり、ケガをした可能性があるのであれば、そのことを警察官に伝えて、病院に行くようにしましょう。
そして、病院でもらった診断書を警察に提出すると、人身事故として扱われるようになります。

ケガをしているのに人身事故にしないデメリットやリスクには次のものがあります。

  • 実況見分調書などの詳細な証拠が作られないため、後日、事故態様や過失割合の立証が難しくなることがある。
  • 事故のためにケガをしたことの立証が困難になる可能性がある。そのため、治療費や慰謝料を請求できなくなる可能性がある。

物損から人身への切り替え

以下のような場合に物損事故扱いから人身事故扱いへの切り替えを検討する方がいらっしゃいます。

  • 事故直後はケガをしていないと思ったけど、後から痛みが出てきた。
  • 人身事故扱いにしないデメリットを後から知った。

物損から人身への切り替えに期限というものはありません。

しかし、事故から時間が経ちすぎてしまうと、事故によってケガをしたことの証明が難しくなります
その証明ができない場合には、警察に人身扱いへの切り替えを拒否されることがあります。

また、仮に人身扱いへの切り替えができても、捜査が遅れてしまい、十分な実況見分ができずに、証拠が不十分なものになるおそれもあります。

事故後に症状がある場合は、すぐに病院で受診をし、診断書を警察に提出して、早期に人身事故扱いにしてもらいましょう。

このページの執筆者
弁護士 深田茂人(大分県弁護士会所属、登録番号33161)
大分市城崎町の深田法律事務所代表。
弁護士歴15年、交通事故の相談を800件以上担当してきました。交通事故被害者と保険会社の情報格差をなくしたいと思い、当サイトにて執筆しています。