大分市城崎町の深田法律事務所代表。
弁護士歴18年、交通事故の相談を1000件以上担当してきました。交通事故被害者と保険会社の情報格差をなくしたいと思い、当サイトにて執筆しています。
首の骨の変形や首を動かしづらい後遺障害の等級
更新日:2021年12月07日
交通事故で首の骨の変形や首を動かしづらい後遺症が残った場合に保険会社から認定される後遺障害等級について解説します。
後遺症の程度と等級
荷重障害
- 6級
- 首と腰の両方を支える硬性補装具が常に必要(首と背の骨の圧迫骨折・脱臼、筋肉等の麻痺や変化のいずれかが原因)
- 8級
- 首を支える硬性補装具が常に必要(首の骨の圧迫骨折・脱臼、うなじの筋肉等の麻痺や変化のいずれかが原因)
運動障害
- 6級
- 首と腰がほぼ動かない(首と背の骨の圧迫骨折・せき椎固定術・筋肉等の変化のいずれかが原因)*「ほぼ動かない」とは、首の全ての主要運動が15度以下、かつ、腰の主要運動が10度以下の状態のことです。
- 8級
- 首を動かせる範囲が2分の1以下(首の骨の圧迫骨折、せき椎固定術、うなじの筋肉等の変化のいずれかが原因)*「動かせる範囲が2分の1以下」とは、首の1つの主要運動が1/2以下、または、1/2を上回っていてもそれが10度以内であり首の参考運動の可動域角度が50度以下、のいずれかの状態のことです。
- 8級
- 頭蓋骨と首の間が異常に動く
変形障害
- 6級
- 首が後ろや横に相当な程度に弯曲している(首の骨の圧迫骨折が原因)*「相当な程度に弯曲」とは次の①②のいずれかです。①首が後ろに弯曲している場合2個以上の首の骨の腹側の高さが減少し、それらの骨の腹側の高さの合計と背側の高さの合計の差が、それらの骨の1個あたりの背側の高さ以上になった。②首が後ろと横に弯曲している場合1個以上の首の骨の腹側の高さが減少し、それらの骨の腹側の高さの合計と背側の高さの合計の差がそれらの骨の1個あたりの背側の骨の高さの50%以上になった。さらに、コブ法による側彎度(首が横に曲がる角度)が50度以上になった(コブ法とは、頭側で最も傾いている首の骨の上の端の延長線と、お尻側で最も傾いている首の骨の下の端の延長線が交わる角度を測定する方法)。
- 8級
- 首が後ろまたは横に一定程度に弯曲している(首の骨の圧迫骨折が原因)*「一定程度に弯曲」とは次の①②のいずれかです。①首が後ろに弯曲している場合1個以上の首の骨の腹側の高さが減少し、それらの骨の腹側の高さの合計と背側の高さの合計の差がそれらの骨の1個あたりの背側の骨の高さの50%以上になった。②首が横に弯曲している場合コブ法による側彎度(首が横に曲がる角度)が50度以上になった(コブ法とは、頭側で最も傾いている首の骨の上の端の延長線と、お尻側で最も傾いている首の骨の下の端の延長線が交わる角度を測定する方法)。
- 8級
- 首の上から1番目と2番目の骨(=環椎と軸椎)が一定程度ずれている*「一定程度ずれている」とは、60度以上の回旋位、50度以上の屈曲位、60度以上の伸展位、30度以上の斜位のいずれかです。
- 11級
- 首の骨に圧迫骨折を残している
- 11級
- 首の骨にせき椎固定手術を行った
- 11級
- 首の3個以上の骨に椎弓形成手術を行った
上記共通
- 等級非該当
- 上記等級ほどの重い症状は無い
- 非典型後遺症
- 上記等級にあてはまらない重い症状がある
等級が認定されるためには首の骨の変形や首を動かしづらい原因が検査などで証明できなければなりません。
等級の詳しい解説
主要運動
関節の様々な動作のうち日常生活において重要と考えられる動作を主要運動といいます。首や腰を動かしづらい後遺症の場合には、主要運動の動く範囲によって等級が判断されます。
首や腰の主要運動は以下のとおりです(括弧内の角度は一般人の平均的な可動域角度(参考可動域角度といいます))。
首の主要運動
首の主要運動は次の2つです。
- 屈曲+伸展(参考可動域角度は110度)
- 左回旋+右回旋(参考可動域角度は120度)
腰の主要運動
屈曲+伸展(参考可動域角度は75度)
参考運動
主要運動以外の動作を参考運動といいます。「首を動かせる範囲が2分の1以下」の場合には8級が認定されますが、その際に主要運動だけでなく参考運動も考慮されることがあります。
首の参考運動
右側屈+左側屈(参考可動域角度は100度)
硬性補装具とは
硬性補装具とは、サポーターのような布製の補装具ではなく、金属やプラスチックの支柱が入った補装具のことです。
等級が認定されるために必要なこと
後遺症の原因(圧迫骨折・せき椎固定術・椎弓形成術・筋肉等の変化など)の証明
圧迫骨折、せき椎固定術、椎弓形成術、筋肉等の変化などの状況を証明して、その状況に応じた後遺症が生じていると判断されれば、首の骨の変形や首を動かしづらい後遺症について後遺障害等級が認定されます。
・圧迫骨折
圧迫骨折とは、首などの背骨が潰れることです。
・せき椎固定術
せき椎固定術とは、首の複数の骨をプレートやスクリューなどの器具で固定する手術です。
・椎弓形成術
椎弓形成術とは、首の骨の背側のアーチ状の部分に人工骨などを入れる手術です。
・筋肉等の変化
首の筋肉などの軟部組織に器質的(=物理的)に明らかな変化が生じてしまった場合をいいます。
後遺症の程度の証明
関節の動かしづらい程度を証明するには、医師に関節の可動域角度を計測してもらう必要があります。
そして、等級の認定は、医師が力を加えて動いた関節の角度(他動値)によるのが原則です。
もっとも、他動値によって等級を認定することが適切でない場合(例1:麻痺のために他動では関節が動くが、自動では動かない場合。例2:がまんできない程度の痛みが生じるために自動では動かせないと医学的に判断される場合)には、例外的に、患者自らの力で動かせる関節の角度(自動値)を計測し、その測定値をもって等級認定します。
なお、測定の際には他の関節まで動かしてしまうこと(代償運動)のないように注意してください(たとえば、首の屈曲の際に胸や腰まで屈曲させないように注意する)。
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