聴力低下などの後遺障害の等級

更新日:2021年12月07日

執筆者:弁護士 深田 茂人

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執筆者プロフィール

交通事故で聴力低下、耳鳴り、耳漏の後遺症が残った場合に保険会社から認定される後遺障害等級について解説します。

後遺症の程度と等級

聴力はオージオメーターを使用し、何デシベル以上の音であれば聴き取れるのかを測定します。

以下は大体の目安にすぎませんが、日常生活の音をデシベルで表したものです。
90デシベル=騒々しい工場の音の程度
80デシベル=電車の車内の音の程度
70デシベル=騒々しい街頭の音の程度
60デシベル=普通の会話の音の程度
50デシベル=静かな事務所の音の程度
40デシベル=図書館の音の程度

以下、聴力低下(両耳・片耳)、耳鳴り、耳漏に分けて、各等級を解説します。

両耳の聴力低下

4級
両耳の聴き取れる音が90デシベル以上
4級
両耳の聴き取れる音が80デシベル以上、かつ、言葉の聞き取りやすさが30%以下
6級
両耳の聴き取れる音が80デシベル以上
6級
両耳の聴き取れる音が50デシベル以上80デシベル未満、かつ、言葉の聞き取りやすさが30%以下
6級
聴き取れる音が、片方の耳は90デシベル以上で、他方の耳は70デシベル以上
7級
両耳の聴き取れる音が70デシベル以上
7級
両耳の聴き取れる音が50デシベル以上、かつ、言葉の聞き取りやすさが50%以下
7級
聴き取れる音が、片方の耳は90デシベル以上で、他方の耳は60デシベル以上
9級
両耳の聴き取れる音が60デシベル以上
9級
両耳の聴き取れる音が50デシベル以上、かつ、言葉の聞き取りやすさが70%以下
9級
聴き取れる音が、片方の耳は80デシベル以上で、他方の耳は50デシベル以上
10級
両耳の聴き取れる音が50デシベル以上
10級
両耳の聴き取れる音が40デシベル以上、かつ、言葉の聞き取りやすさが70%以下
11級
両耳の聴き取れる音が40デシベル以上

*「言葉の聞き取りやすさ」はスピーチオージオメーターを使用して測定します。

片耳の聴力低下

9級
片方の耳の聴き取れる音が90デシベル以上
10級
片方の耳の聴き取れる音が80デシベル以上90デシベル未満
11級
片方の耳の聴き取れる音が70デシベル以上80デシベル未満
11級
片方の耳の聴き取れる音が50デシベル以上、かつ、言葉の聞き取りやすさが50%以下
14級
片方の耳の聴き取れる音が40デシベル以上70デシベル未満

耳鳴り

12級
耳鳴りがあることを検査で確認ができて、難聴もある
14級
耳鳴りがあることを医師の診察やケガをした状況によって説明することができて、難聴もある

耳漏

12級
常に耳漏がある(=耳から液体が出てくる)
14級
常にではないが耳漏がある

上記共通

等級非該当
上記等級ほどの重い症状は無い
非典型後遺症
上記等級にあてはまらない重い症状がある

等級が認定されるためには聴力低下などの原因が検査などで証明できなければなりません。

保険会社から等級が認定されるケース

聴力低下などの原因の証明

等級が認定されるためには、聴力低下などが生じている原因を証明する必要があります。原因は複雑であることが多いのですが、代表的なものは以下のとおりです。
・内耳震盪(ないじしんとう)
=内耳のリンパ液が振動した。
・耳小骨転位(びしょうこつてんい)
=耳小骨の連結に異常が生じたり、はずれてしまったりした。
・外リンパ漏(がいりんぱろう)
=蝸牛窓や前庭窓が破裂して外リンパ液が中耳に流れ出た。
・側頭骨骨折(そくとうこつこっせつ)
=側頭部を構成する骨を骨折した。
・後迷路性難聴(こうめいろせいなんちょう)
=内耳より奥、つまり、聴神経から脳に至る聴覚伝導路のいずれかが障害された。

聴力低下などの程度の証明

「聴き取れる音」はオージオメーターで測定し、「言葉の聞き取りやすさ」はスピーチオージオメーターで測定して証明します。

【聴き取れる音(=平均純音聴力レベル)の測定方法】
オージオメーターを使用して測定します。聴力はデシベル(dB)で表示します。
500、1000、2000、4000ヘルツ(Hz)と音の高低を変えて、何デシベルの音が聴き取れるかを測定します。
検査には3回行き、2回目、3回目の測定値の平均値をとって 計算します(6分法)。検査と検査の間隔は7日程度開けます。

【言葉の聞き取りやすさ(=最高明瞭度)の測定方法】
スピーチオージオメーターを使用して測定します。語音聴取閾値検査と語音弁別検査を行います。ヘルツごとに明瞭度で表示され、その最高値を最高明瞭度として採用します。

なお、オージオメーターやスピーチオージオメーターは、被害者の自覚的な応答で判定されるものであるため、等級認定のためには以下のような他覚的な検査が求められることもあります。
・聴性脳幹反応(Auditory Brain-stem Response ; ABR)
=聴覚神経系を興奮させ、脳が示す電気生理学的な反応を読み取る検査。
・アブミ骨筋反射(Stapedius Reflex ; SR)
=大音響に対してアブミ骨に付いている耳小骨筋は収縮しますが、この収縮作用を利用した検査。

「耳鳴り」の12級が認定されるためには、以下の検査による証明が必要です。
ピッチ・マッチ検査(聞こえている耳鳴りの周波数を判定する検査)
ラウドネス・バランス検査(聞こえている耳鳴りの音量を判定する検査)

後遺障害診断書に書いてもらう

医師に後遺障害診断書の④欄「聴力と耳介の障害」の「オージオグラムを添付してください」や「耳鳴り」の欄に聴力や最高明瞭度、耳鳴について書いてもらって、それを自賠責保険会社または任意保険会社に提出して、後遺障害等級を認定してもらいます。

このページの執筆者
弁護士 深田茂人

弁護士 深田茂人
大分県弁護士会所属
登録番号33161

大分市城崎町の深田法律事務所代表。
弁護士歴18年、交通事故の相談を1000件以上担当してきました。交通事故被害者と保険会社の情報格差をなくしたいと思い、当サイトにて執筆しています。

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