手指を動かしづらい後遺障害の等級

更新日:2021年12月07日

執筆者:弁護士 深田 茂人

交通事故被害者が損をしないための情報を手軽に得られるように、「交通事故お役立ち手帳」サイトを運営・執筆しています。そのコンセプトに賛同する全国の交通事故に詳しい弁護士とともに、無料相談にも対応しています。弁護士歴18年、交通事故相談担当1000件以上、大分県弁護士会所属(登録No33161)。

執筆者プロフィール

交通事故で手指を動かしづらい後遺症が残った場合に保険会社から認定される後遺障害等級について解説します。

後遺症の程度と等級

両手の全指

4級
両手の全指の関節の動かせる範囲が2分の1以下

片手の親指含む

7級
片手の全指又は親指を含む4指の関節の動かせる範囲が2分の1以下
8級
片手の親指を含む3指の関節の動かせる範囲が2分の1以下
9級
片手の親指を含む2指の関節の動かせる範囲が2分の1以下
10級
片手の親指の関節の動かせる範囲が2分の1以下

片手の親指以外

8級
片手の親指以外の4指の関節の動かせる範囲が2分の1以下
9級
片手の親指以外の3指の関節の動かせる範囲が2分の1以下
10級
片手の親指以外の2指の関節の動かせる範囲が2分の1以下
12級
片手の人差し指・中指・薬指のうち1指の関節の動かせる範囲が2分の1以下
13級
片手の小指の関節の動かせる範囲が2分の1以下
14級
片手の親指以外の1指の末端の関節が動かない

上記共通

等級非該当
上記等級ほどの重い症状は無い
非典型後遺症
上記等級にあてはまらない重い症状がある

等級が認定されるためには手の指を動かしづらい原因が検査などで証明できなければなりません。

等級の詳しい解説

「指の関節の動かせる範囲が2分の1以下」とは

・親指の関節の動かせる範囲が2分の1以下とは、
(ⅰ)根元から数えて一番目の関節又は二番目の関節の「屈曲+伸展」の可動域角度が1/2以下
(ⅱ)橈側外転または掌側外転の可動域角度が1/2以下
(ⅲ)指腹部や側部の感覚が完全に失われた
のいずれかの状態

・親指以外の指の関節の動かせる範囲が2分の1以下とは、
(ⅰ)根元から数えて一番目の関節又は二番目の関節の「屈曲+伸展」の可動域角度が1/2以下
(ⅱ)指腹部や側部の感覚が完全に失われた
のいずれかの状態

「指の末端の関節が動かない」とは

(ⅰ)指の根元から3番目の関節が、10度以下、または、10%に相当する角度を5度単位で切り上げた角度以下
(ⅱ)自動で屈伸がほとんどできず、原因が明らかなもの(屈伸筋の損傷など)
のいずれかの状態

親指の動き

手の親指の動きは次の3つです(カッコ内は一般人の関節の平均的な可動域角度(参考可動域角度といいます))。

  • 屈曲+伸展根元の関節:70度、根元から2番目の関節:90度)
  • 橈側外転(60度)
  • 掌側外転(90度)

手の親指の根元の屈曲・伸展
手の親指の先の屈曲・伸展
橈側外転
掌側外転

親指以外の指の動き

屈曲+伸展根元の関節:135度、根元から2番目の関節:100度、根元から3番目の関節:80度)
*カッコ内は一般人の関節の平均的な可動域角度(参考可動域角度)
手の指の根元の屈曲・伸展
手の指の真ん中の屈曲・伸展
手の指の先の屈曲・伸展

「1/2以下」「10%」とは

反対側の関節の可動域角度の「1/2以下」「10%」という意味です。たとえば右手の親指が動かしづらい後遺障害の場合は、左手の親指の同じ関節の同じ動きと比較してどの程度動かしづらいのかによって等級が決められることになります。
もっとも、反対側の関節にも後遺障害がある場合には、一般人の関節の平均的な可動域角度(参考可動域角度)と比較します。

「指腹部や側部の感覚が完全に失われた」とは

感覚神経が断裂するほどの外傷を負い、感覚神経伝導速度検査によって感覚が完全に失われたことが証明される必要があります。

関節の動かしづらい原因を証明する方法

関節が動かしづらい後遺症の後遺障害等級を認定してもらうためには、その関節の動かしづらい原因を証明する必要があります。
そのため、ケースに応じて、たとえば、骨折後に関節の骨がわずかに欠けていることをCTによって証明したり(レントゲンでは映らないことが多くあります)、MRIや神経伝導速度検査によって神経の損傷を証明したりする必要があります。

関節の動かしづらい程度を証明する方法

関節の動かしづらい程度を証明するには、医師に関節の可動域角度を計測してもらう必要があります。
そして、等級の認定は、医師が力を加えて動いた関節の角度(他動値)によるのが原則です。
もっとも、他動値によって等級を認定することが適切でない場合(例1:麻痺のために他動では関節が動くが、自動では動かない場合。例2:がまんできない程度の痛みが生じるために自動では動かせないと医学的に判断される場合)には、例外的に、患者自らの力で動かせる関節の角度(自動値)を計測し、その測定値をもって等級認定します。
なお、測定の際には他の関節まで動かしてしまうこと(代償運動)のないように注意してください(たとえば、親指の橈側外転の際に手首を側屈させないように注意する)。

このページの執筆者
弁護士 深田茂人

弁護士 深田茂人
大分県弁護士会所属
登録番号33161

大分市城崎町の深田法律事務所代表。
弁護士歴18年、交通事故の相談を1000件以上担当してきました。交通事故被害者と保険会社の情報格差をなくしたいと思い、当サイトにて執筆しています。

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