大分市城崎町の深田法律事務所代表。
弁護士歴18年、交通事故の相談を1000件以上担当してきました。交通事故被害者と保険会社の情報格差をなくしたいと思い、当サイトにて執筆しています。
肩・ひじ・手首を動かしづらい後遺障害の等級
更新日:2021年12月07日
肩・ひじ・手首を動かしづらい後遺症が残った場合に保険会社から認定される後遺障害等級について解説します。
後遺症の程度と等級
関節を動かしづらい
両うでの6関節
- 1級(別表第二)
- 両うでの肩・ひじ・手首の6関節がほぼ動かなくなり、両手の10本の指の動かせる範囲が2分の1以下
片うでの3関節
- 5級
- 片方の肩・ひじ・手首の3関節がほぼ動かなくなり、手の5本の指の動かせる範囲が2分の1以下
- 6級
- 片方の肩・ひじ・手首のうち2関節がほぼ動かなくなり、残る1関節の動かせる範囲が2分の1以下
- 8級
- 片方の肩・ひじ・手首の3関節の動かせる範囲が2分の1以下
- 10級
- 片方の肩・ひじ・手首の3関節の動かせる範囲が4分の3以下
片うでの2関節
- 6級
- 片方の肩・ひじ・手首のうち2関節がほぼ動かない
- 7級
- 片方の肩・ひじ・手首のうち1関節がほぼ動かなくなり、他の1関節の動かせる範囲が2分の1以下
- 11級
- 片方の肩・ひじ・手首のうち2関節の動かせる範囲が4分の3以下
片うでの1関節
- 8級
- 片方の肩・ひじ・手首のうち1関節がほぼ動かない
- 10級
- 片方の肩・ひじ・手首のうち1関節の動かせる範囲が2分の1以下
- 12級
- 片方の肩・ひじ・手首のうち1関節の動かせる範囲が4分の3以下
手のひらを上や下に向ける運動
- 10級
- 片方の手のひらを上や下に向ける運動で動かせる範囲が4分の1以下
- 12級
- 片方の手のひらを上や下に向ける運動で動かせる範囲が2分の1以下
人工関節・人工骨頭
- 6級
- 片方の肩・ひじ・手首のうち2関節に人工関節・人工骨頭を挿入しており、それらの関節の動かせる範囲が2分の1以下
- 8級
- 片方の肩・ひじ・手首のうち1関節に人工関節・人工骨頭を挿入しており、その関節の動かせる範囲が2分の1以下
- 10級
- 片方の肩・ひじ・手首のうち1関節に人工関節・人工骨頭を挿入したが、その関節の動かせる範囲が2分の1以下にはなっていない
硬性補装具
- 10級
- 片方の肩・ひじ・手首のうち1関節が異常に曲がるために硬性補装具が常に必要
- 12級
- 片方の肩・ひじ・手首のうち1関節が異常に曲がるために硬性補装具が時々必要
習慣性脱臼
- 12級
- 片方の肩・ひじ・手首のうち1関節がたびたび脱臼をするようになった
上記共通
- 等級非該当
- 上記等級ほどの重い症状は無い
- 非典型後遺症
- 上記等級にあてはまらない重い症状がある
*決められた測定方法によって各関節がどのくらい動くかを測定して等級が判断されます。*等級が認定されるためには関節を動かしづらい原因が検査などで証明できなければなりません。
等級の詳しい解説
「肩・ひじ・手首の全関節がほぼ動かない」(1級、5級)とは
肩・ひじ・手首の全関節の全ての主要運動の可動域角度が10度以下、または、10%に相当する角度を5度単位で切り上げた角度以下の状態。
「関節がほぼ動かない」(1級と5級以外)とは
- 関節の全主要運動の可動域角度が10度以下、または、10%に相当する角度を5度単位で切り上げた角度以下
- 人工関節・人工骨頭を挿入した関節の1つの主要運動の可動域角度が1/2以下
のいずれかの状態。
「関節の動かせる範囲が2分の1以下」とは
- 関節の1つの主要運動の可動域角度が1/2以下
- 肩または手首の関節の1つの主要運動の可動域角度が1/2を上回っていてもそれが10度以内であり、その関節の1つの参考運動の可動域角度が1/2以下
- 人工関節・人工骨頭を挿入した関節のどの主要運動も可動域角度が1/2以下に制限されていないもの
- 前腕の「回内+回外」の可動域角度が1/4以下
のいずれかの状態。
「関節の動かせる範囲が4分の3以下」とは
- 関節の1つの主要運動の可動域角度が3/4以下
- 肩または手首の関節の1つの主要運動の可動域角度が3/4を上回っていてもそれが5度以内であり、その関節の1つの参考運動の可動域角度が3/4以下
- 前腕の「回内+回外」の可動域角度が1/2以下
のいずれかの状態。
「指の動かせる範囲が2分の1以下」とは
・親指の用廃とは、
- 根元から数えて一番目の関節又は二番目の関節の「屈曲+伸展」の可動域角度が1/2以下
- 橈側外転または掌側外転の可動域角度が1/2以下
のいずれかの状態
・親指以外の指の用廃とは、根元から数えて一番目の関節又は二番目の関節の「屈曲+伸展」の可動域角度が1/2以下の状態。
主要運動
関節の様々な動作のうち日常生活において重要と考えられる動作を主要運動といいます。各関節の主要運動は以下のとおりです(括弧内の角度は一般人の平均的な可動域角度(参考可動域角度といいます))。
肩の主要運動
- 屈曲(参考可動域角度は180度)
- 外転+内転(参考可動域角度は180度)
ひじの主要運動
屈曲+伸展(参考可動域角度は150度)
手首の主要運動
屈曲+伸展(参考可動域角度は160度)
前腕の主要運動
回内+回外(参考可動域角度は180度)
*片方の手のひらを上や下に向ける運動です。
手の親指の主要運動
手の親指の主要運動は次の3つです。
- 屈曲+伸展(参考可動域角度は、根元の関節が70度、根元から2番目の関節が90度)
- 橈側外転(参考可動域角度は60度)
- 掌側外転(参考可動域角度は90度)
手の親指以外の指の主要運動
屈曲+伸展(参考可動域角度は、根元の関節が135度、根元から2番目の関節が100度、根元から3番目の関節が80度)
参考運動
主要運動以外の動作を参考運動といいます。
各関節の参考運動は以下のとおりです(角度は一般人の平均的な可動域角度(参考可動域角度といいます))。
肩の参考運動
肩の参考運動は次の2つです。
- 伸展(参考可動域角度は50度)
- 外旋+内旋(参考可動域角度は140度)
手首の参考運動
橈屈+尺屈(参考可動域角度は80度)
ひじ・前腕・手の指の参考運動
参考運動はありません。
「10%」「1/4以下」「1/2以下」「3/4以下」とは
反対側の関節の可動域角度の「10%」「1/4以下」「1/2以下」「3/4以下」という意味です。たとえば片方の肩が動かしづらい後遺障害の場合は、左の肩の同じ動きと比較してどの程度動かしづらいのかによって等級が決められることになります。
もっとも、反対側の関節にも後遺障害がある場合には、一般人の関節の平均的な可動域角度(参考可動域角度)と比較します。
硬性補装具とは
硬性補装具とは、サポーターのような布製の補装具ではなく、金属やプラスチックの支柱が入った補装具のことです。
保険会社から等級が認定されるために必要なこと
後遺障害等級の認定を受けるためには、症状を訴えるだけでは足りず、関節の動かしづらい原因と程度を証明しなけれなりません。
関節の動かしづらい原因を証明する
関節が動かしづらい後遺症の後遺障害等級を認定してもらうためには、その関節の動かしづらい原因を証明する必要があります。
そのため、ケースに応じて、たとえば、骨折後に関節の骨がわずかに欠けていることをCTによって証明したり(レントゲンでは映らないことが多くあります)、MRIや神経伝導速度検査によって神経の損傷を証明したりする必要があります。関節の動かしづらい程度を証明する
関節の動かしづらい程度を証明するには、医師に関節の可動域角度を計測してもらう必要があります。
そして、等級の認定は、医師が力を加えて動いた関節の角度(他動値)によるのが原則です。
もっとも、他動値によって等級を認定することが適切でない場合(例1:麻痺のために他動では関節が動くが、自動では動かない場合。例2:がまんできない程度の痛みが生じるために自動では動かせないと医学的に判断される場合)には、例外的に、患者自らの力で動かせる関節の角度(自動値)を計測し、その測定値をもって等級認定します。
なお、測定の際には他の関節まで動かしてしまうこと(代償運動)のないように注意してください(たとえば、肩の外転の際に背骨を側屈させないように注意する)。
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