大分市城崎町の深田法律事務所代表。
弁護士歴18年、交通事故の相談を1000件以上担当してきました。交通事故被害者と保険会社の情報格差をなくしたいと思い、当サイトにて執筆しています。
交通事故の慰謝料はいくらが正しい?相場と請求できるお金の種類
更新日:2024年07月18日
- 交通事故に遭ってしまいました。請求できる慰謝料について教えてください!
- 交通事故の慰謝料を請求する際に押さえておきたいポイントは、次の3つです。わかりやすく説明しますね。
【交通事故慰謝料の3つのポイント】
- 慰謝料の金額には「相場」がある。
- 慰謝料は3種類ある。
- 慰謝料以外に請求できるお金がある。
慰謝料とは
慰謝料(いしゃりょう)とは、交通事故に遭った被害者の精神的な苦痛にお詫びするために、加害者が支払うお金のことです。
交通事故に遭うと、被害者には様々な精神的苦痛があります。
たとえば、ケガをした場合の痛みや治療の苦痛、後遺症が残った場合の生活の不便によるわずらわしさ、亡くなられた場合の無念さなどです。
そうした“精神的苦痛”に対して、“慰謝料”が請求できます。
また、病院にかかる治療費やケガで仕事ができずに減った収入(休業損害)などの経済的な損失は、慰謝料とは別に請求する必要があります。
このような交通事故で加害者に請求できるお金をまとめて「賠償金」といいます。
慰謝料は賠償金の中の一つです。
慰謝料の相場は「弁護士基準」で考えましょう
保険会社が提示する慰謝料の金額を鵜呑みにしないでください。
なぜなら、保険会社の内部のマニュアルで計算したものだからです。
つまり、会社が「支払い額をこの程度に抑えたい」と希望している金額なのです。
そこで、意識してほしいのが弁護士基準で慰謝料を計算すること。
弁護士基準は、過去の裁判例をもとにした計算方法であり、金額がもっとも高くなるからです(保険会社の提示額の2倍以上になることもよくあります)。
被害者としては、弁護士基準で計算し、保険会社と金額について話し合うことが大切です。
- 弁護士基準で計算すればいいんですね!私の場合、いくらの金額になるのでしょうか?
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慰謝料は3種類あります
交通事故の慰謝料には次の3つの種類があります。
- 傷害慰謝料
ケガをさせたことをお詫びするためのお金(入通院慰謝料ともいいます) - 後遺症慰謝料
後遺症が残ったことをお詫びするためのお金(後遺障害慰謝料ともいいます) - 死亡慰謝料
死亡させたことをお詫びするためのお金
これらの慰謝料は、1種類しか請求できないわけではありません。
場合によっては、複数の慰謝料を請求することができます。
たとえば、後遺症が残った場合は、ケガをしたことに対しての傷害慰謝料だけではなく、当然のことながら、後遺症慰謝料も請求できます。
ケガをして1日以上経過した後に亡くなられた場合は、傷害慰謝料だけではなく、死亡慰謝料も請求できます。
以下では、3種類の慰謝料について、弁護士基準の相場を解説します。
傷害慰謝料
傷害慰謝料(ケガをさせた被害者にお詫びするためのお金)の弁護士基準の相場については、過去の裁判例をもとにして、まとめられた表があります。
重症の場合と軽症の場合の2種類があります。
重症の場合の相場
「他覚所見がないムチウチや軽い打撲・キズ」以外のケガはすべて、次の表が使われます(他覚所見とは、病院での各種検査によって異常が認められることをいいます)。
軽症の場合の相場
「他覚所見がないムチウチや軽い打撲・キズ」の場合は、次の表が使われます。
表の見方
入院期間と通院期間が交差する欄の金額になります(単位は万円)。
たとえば、入院1ヶ月・通院6ヶ月の場合、弁護士基準の傷害慰謝料は以下の金額になります。
「他覚所見がないムチウチや軽い打撲・キズ」以外のケガの場合は、次のように、入院期間1月と通院期間6月が交差する欄の149万円です。
「他覚所見がないムチウチや軽い打撲・キズ」のケガの場合は、次のように、入院期間1月と通院期間6月が交差する欄の113万円です。
ただし、上の表の金額は、あくまで「基準」にすぎません。
個別の事情がある場合、基準の金額が増減することがあります。
そのような「個別の事情」の具体例については、傷害慰謝料のページの「相場の金額を増減させる個別の事情」の項をご覧ください。
- 「私の場合は、弁護士基準だと、傷害慰謝料などの賠償金額はいくら?」とお考えの方は、こちらの賠償金自動計算機のページで、かんたんに自動計算できます。
後遺症慰謝料(後遺症が残った場合)
後遺症慰謝料(後遺症が残った被害者にお詫びするためのお金)の弁護士基準の金額は、次の表のとおりです。
後遺障害等級によって金額が決められています。
(後遺障害等級とは、後遺症の重症度を等級で表したものであり、保険会社から通知されます。別表一の等級は介護を要する後遺症で認定され、別表二の等級は介護を要しない後遺症で認定されます。)
たとえば、脳の損傷によって、高度の痴呆が残り、食事等の身の回り動作に全面的な介護が必要となった場合は、別表一の1級にあたり、後遺症慰謝料の弁護士基準の金額は2800万円になります(近親者がいる場合はさらに増額されることが多いです)。
他覚所見のないムチウチによって、手足のしびれが残った場合は、別表二の14級にあたり、後遺症慰謝料の弁護士基準の金額は110万円になります。
ただし、上の表の金額は、あくまで「基準」にすぎません。
個別の事情がある場合、基準の金額が増減することがあります。
そのような「個別の事情」の具体例については、後遺障害慰謝料のページの「個別の事情によって金額が増減します」の項をご覧ください。
- 「私の場合は、弁護士基準だと、後遺症慰謝料などの賠償金額はいくら?」とお考えの方は、こちらの賠償金自動計算機のページで、かんたんに自動計算できます。
死亡慰謝料(亡くなられた場合)
死亡慰謝料(被害者を死亡させたことを遺族にお詫びするためのお金)の弁護士基準の金額は、次のとおりです。
亡くなられた被害者の家庭内での立場によって金額が決められています。
- 家族の生活費の大部分を稼いでいた
2800万円 - 家事や子育てをしていた親
2500万円 - 父母や兄弟に仕送りなどをしていた
2500万円 - 独身者・子供・高齢者など
2000~2500万円
ただし、上記の金額は、あくまで「基準」にすぎません。
個別の事情がある場合、基準の金額が増減することがあります。
そのような「個別の事情」の具体例については、死亡慰謝料のページの「金額が増減する個別の事情」の項をご覧ください。
- 「弁護士基準だと、死亡慰謝料などの具体的な賠償金額はいくらだろう?」とお考えの方は、こちらの賠償金自動計算機のページで、かんたんに自動計算できます。
慰謝料以外に請求できるお金があります
- 交通事故では慰謝料のほかに請求できるお金がありますか?
- はい、あります。治療費や休業損害をはじめ、諸々の経済的な損失分を請求できます。
慰謝料は“精神的な苦痛”をかけたことをお詫びするためのお金です。
しかし、交通事故の被害者には、精神的な苦痛だけではなく、“経済的な損失”も生じます。
経済的な損失は、慰謝料とは別に請求をする必要があります。
たとえば、病院にかかる治療費はもちろん、ケガの治療のために仕事ができずに減った収入(休業損害)や、後遺症が残ったために稼ぎにくくなったお金(後遺症逸失利益)などがあります。
このような交通事故で加害者に請求できるお金をまとめて「賠償金」といいます。
慰謝料は賠償金の中の一つです。
ということで、ここからは、賠償金に含まれる以下のお金について解説していきます。
- 休業損害(仕事や家事を休んだ場合)
- 通院交通費
- 入院雑費(入院した場合)
- 後遺症逸失利益(後遺症が残った場合)
- 将来の介護費用(重度の後遺症が残った場合)
- 死亡逸失利益(亡くなられた場合)
- 葬儀費用(亡くなられた場合)
- 治療費
- 入通院付き添い費
- その他の費用
慰謝料以外のお金についても「弁護士基準」で計算し、保険会社と金額について話し合うことが大切です。
以下では、慰謝料以外のお金の弁護士基準の相場を解説します。
休業損害(仕事や家事を休んだ場合)
休業損害とは、事故によるケガが原因で仕事を休んだために得られなかった収入のことです。
交通事故でケガをすると、治療や安静のために仕事を休まなければならないことがあります。
そのために収入が減ってしまったときには、その減収分のお金を休業損害として保険会社に請求できます。
休業損害の弁護士基準による計算方法は次のとおりです。
1日あたりの収入額×仕事を休んだ日数
1日あたりの収入額は、事故前3か月分の総収入額を90日で割り算して算出するのが一般的です。
【計算例】
事故前3か月分の総収入額が90万円、仕事を休んだ日数が60日の場合
90万円÷90日=1万円
1万円×60日=60万円(休業損害)
事故のケガで仕事を休んだために賞与の減額もある場合は、その減額分も加算して請求できます。
なお、主婦などの家事従事者の場合、1日あたりの収入額は、女性の平均年収を365日で割り算して算出するのが一般的です。
たとえば、令和元年の女性の平均年収は388万0100円ですので、1日あたりの収入額は、388万0100円÷365日=1万0630円になります。
この金額に家事ができなかった日数をかけ算して、休業損害を計算します。
ちなみに、自賠責基準では、1日あたり原則6100円で計算されます。
(自賠責基準とは、法律で保険会社が最低限支払わなければならないとされている金額の計算方法のことです)。
休業損害がもらえる時期、職業ごとの詳しい計算方法などはこちら
通院交通費
通院交通費とは、被害者が病院に通うための交通費です。
通院交通費の弁護士基準による計算方法は次のとおりです。
- 自家用車を利用した場合
距離1kmあたり15円 - 電車やバスなどの公共交通機関を利用した場合
実費 - タクシーを利用した場合
実費(ケガの内容などから、タクシーを利用することが相当であることが必要です。)
【計算例】
自宅と病院までの距離が往復10kmあり、自家用車で40日通院した場合
10km×40日×15円=6000円
入院雑費(入院した場合)
入院した場合、以下のような細かな出費があります。
- 入院中の日用品の購入費
- 栄養剤購入費、電話代
- テレビ賃借料
- 家族交通費
これらの入院雑費の弁護士基準による計算方法は次のとおりです。
入院1日あたり定額1500円
【計算例】
20日間入院した場合
1500円×20日=3万円
ちなみに、自賠責基準では、1日あたり1100円で計算されます
(自賠責基準とは、法律で保険会社が最低限支払わなければならないとされている金額の計算方法のことです)。
後遺症逸失利益(後遺症が残った場合)
後遺症逸失利益(こういしょう いっしつりえき)とは、後遺症が仕事に影響して稼ぎにくくなったお金のことです。
ケガが完治せずに後遺症が残った場合、将来にわたって後遺症が仕事に影響し、お金を稼ぎにくくなることが考えられます。
そのような稼ぎにくくなったお金を後遺症逸失利益として保険会社に請求できます。
後遺症逸失利益の弁護士基準による計算方法は次のとおりです。
年収×後遺症によって稼ぎにくくなった割合×後遺症によって稼ぎにくくなった年数のライプニッツ係数
「後遺症によって稼ぎにくくなった割合」は、次の表のとおり、後遺障害等級ごとに違いがあります。
(後遺障害等級とは、後遺症の重症度を等級で表したものであり、保険会社から通知されます。)
ただし、上記のパーセンテージは目安とされるものであり、後遺症の影響を受けやすい仕事かによって変動する可能性があります。
また、「後遺症によって稼ぎにくくなった年数」は、67歳までの年数とされるのが原則です(ただし、高齢者の場合は平均余命までの2分の1の年数)。
なお、年数ではなくライプニッツ係数でかけ算するのは、将来稼げるはずだったお金をすぐに請求するため、金利を差し引く必要があるからです。
【計算例】
年収500万円の35歳男性が後遺障害等級12級を認定された場合
67歳-35歳=32年
32年のライプニッツ係数=20.3888
500万円×14%×20.3888=1427万2160円(後遺症逸失利益)
どのような場合に後遺症逸失利益を請求できるか、職業ごとの詳しい金額の計算方法などはこちら
将来の介護費用(重度の後遺症が残った場合)
将来の介護費用とは、重度の後遺症があるために将来にわたって必要となる介護の費用です。
将来の介護費用の弁護士基準による計算方法は次のとおりです。
1年あたりの介護費用×平均余命年数のライプニッツ係数
ライプニッツ係数でかけ算するのは、将来にわたって必要となるお金をすぐに請求するため、金利を差し引く必要があるからです。
【計算例】
男性45歳、施設の月額利用料が30万円の場合
男性45歳の平均余命=37年
37年のライプニッツ係数=22.1672
30万円✕12ヶ月✕22.1672=7980万1920円(将来の介護費用)
どのような場合に将来の介護費用を請求できるか、詳しい金額の計算方法などはこちら
死亡逸失利益(亡くなられた場合)
死亡逸失利益とは、亡くなったことによって稼げなくなったお金(稼働分)と受け取れなくなった年金(年金分)のことです。
交通事故の被害者が亡くなられた場合、その方が将来にわたって稼ぐはずであったお金や受け取るはずであった年金を死亡逸失利益として保険会社に請求できます。
死亡逸失利益の弁護士基準による計算方法は次のとおりです。
<稼働分>
年収×(100%-生きていたら必要な生活費の割合)×生きていたら働いたであろう年数のライプニッツ係数
<年金分>
年金額×(100%-生きていたら必要な生活費の割合)×平均余命年数のライプニッツ係数
「生きていたら生活費に使った割合」は次のとおりです
(目安であり、家族構成や収入などによって変動する可能性があります)。
- 稼働分
- 男性
扶養家族なし:50%
扶養家族1人:40%
扶養家族2人以上:30% - 女性
30%
- 男性
- 年金分
50~60%で計算されることが多い(家族の構成や収入などによる)。
「生きていたら働いたであろう年数」は、67歳までの年数とされるのが原則です(ただし、高齢者の場合は平均余命までの2分の1の年数)。
また、年数ではなく「ライプニッツ係数」でかけ算するのは、将来得られるはずだったお金をすぐに請求するため、金利を差し引く必要があるからです。
【計算例(稼働分)】
年収500万円の35歳男性(扶養家族2人)が亡くなった場合
67歳-35歳=32年
32年のライプニッツ係数=20.3888
500万円×(100%-30%)×20.3888=7136万0800円(稼働分)
【計算例(年金分)】
年金額200万円の70歳女性が亡くなった場合
70歳女性の平均余命=20.21年→20年(小数点以下は切り捨てます)
20年のライプニッツ係数=14.8775
200万円×(100%-50%)×14.8775=1487万7500円(年金分)
収入のある方や家事従事者が年金を受給していた場合は、稼働分と年金分の両方を請求できます。
葬儀費用(亡くなられた場合)
葬儀費用を保険会社に請求できます。
葬儀費用に含まれるのは以下のような項目です。
- 葬儀業者に支払った費用
- 火葬・埋葬料
- 葬儀広告代
- 花代
- 弔問客に提供する食事代
- お布施・読経・戒名・法名代
- 墓地・墓石費用
- 仏壇・位牌購入費用
- 49日までの法要代
葬儀費用の弁護士基準による計算方法は次のとおりです。
実際に支払った金額。ただし、一般的には上限150万円。
【計算例】
葬儀費用が総額230万円かかった場合
150万円までしか支払ってもらえないのが一般的です。
治療費
事故によるケガの治療のために必要な治療費を保険会社に請求できます。
保険会社から病院に直接支払われることが多いです。
治療費は誰が払うのか、いつまで払ってもらえるのか、健康保険を使うべきか、整骨院や鍼灸院にも通えるかについてはこちら
入通院付き添い費
入通院付き添い費とは、近親者の付き添いの負担を金銭換算したものです。
交通事故の被害者が幼少である場合やケガが重い場合、入通院にあたって近親者の付き添いが必要になります。
そのような場合には、近親者の負担を金銭換算し、そのお金を入通院付き添い費として保険会社に請求できます。
入通院付き添い費の弁護士基準による計算方法は次のとおりです。
入院中の付添回数×6500円+通院中の付添回数×3300円
【計算例】
入院中の付き添い10回、通院中の付き添い20回
10回×6500円+20回×3300円=13万1000円
その他の費用
交通事故に遭われたために出費を余儀なくされるものは、ほかにも様々なものが考えられます。
たとえば、以下のような出費です。
- 装具・器具購入費
- 宿泊費
- 通院以外の交通費
- 教育関係費
- 旅行のキャンセル代
- ペットを預ける費用
このような出費があった場合、「その他の費用」として保険会社から支払いを受けられる可能性があります。
- いろんなお金を請求しなければなりませんね。1つずつ計算するのが大変そう・・・
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いくらもらったかの実例をケース別に紹介
この記事の執筆担当弁護士が実際に依頼を受けた案件で、いくらもらったのかの実例をご紹介します。
各事例につき、
【依頼前の保険会社提示額】と
【依頼後の示談金額】
をそれぞれ並べています。
実際の保険会社の提示額と弁護士基準の金額の「差」をイメージしていただければと思います。
ムチウチの事例
ムチウチで後遺症のないケースと、後遺症があって後遺障害等級が認定されたケースを紹介します。
後遺症のないケース
70代の女性(主婦)が、車を運転して交差点を直進しようとしたところ、一時停止規制のある左側の道路から出てきた車と衝突し、ムチウチによる腰椎捻挫と頸椎捻挫を負った事故でした。
依頼前と依頼後で、以下のとおり金額が変わっています。
【依頼前の保険会社提示額】
傷害慰謝料 20万1600円
休業損害 13万6800円
通院交通費 2880円
治療費 9万1220円
上記合計 43万2500円
過失割合 依頼者0%:相手方100%
既払額 9万1220円
保険会社提示額 34万1280円
【依頼後の示談金額】
傷害慰謝料 58万6000円
休業損害 35万4446円
通院交通費 2880円
治療費 12万9986円
上記合計 107万3312円
過失割合 依頼者15%:相手方85%
過失相殺額 -16万997円
既払額 -12万9986円
示談金額 78万2329円
保険会社の提示は、傷害慰謝料や休業損害が低いかわりに、過失割合を0%とするものでした。
過失割合は揉めやすいため、保険会社がこのような提案をしてくることは、ときどきあります。
ご依頼後に弁護士基準で提案したところ、保険会社は法律文献に基づく過失割合15%を主張してきました。
上記のとおり増額することを前提に、過失割合15%で示談となりました。
なお、ご依頼後に追加の治療費も支払われています。
- 「私の場合は、弁護士基準だと、賠償金額はいくら?」とお考えの方は、こちらの賠償金自動計算機のページで、かんたんに自動計算できます。
14級が認定されたケース
30代の女性(主婦)の運転する車が、交差点で停止中に追突された事故でした。
ムチウチによる頚椎捻挫と腰椎捻挫のため、首と腰の痛みや手足のしびれなどの神経症状が残り、後遺障害等級14級が認定されました。
依頼前と依頼後で、以下のとおり金額が変わっています。
【依頼前の保険会社提示額】
傷害慰謝料 61万2744円
後遺症慰謝料・逸失利益 75万円
休業損害 42万7500円
通院交通費 6万1800円
文書料 1万800円
治療費 病院に支払済
上記合計 186万2844円
過失割合 依頼者0%:相手方100%
保険会社提示額 186万2844円
【依頼後の示談金額】
傷害慰謝料 110万9999円
後遺症慰謝料 110万円
後遺症逸失利益 76万7880円
休業損害 153万5500円
通院交通費 6万1800円
文書料 1万800円
治療費 病院に支払済
上記合計 458万5979円
過失割合 依頼者0%:相手方100%
示談金額 458万5979円
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骨折の事例
50代の男性(アルバイト従業員)が、バイクで交差点に入ったところ、出会いがしらに車と衝突した事故でした。
左上腕の骨折後、左肩を動かせる範囲が2分の1以下となる後遺症が残り、後遺障害等級10級が認定されました。
依頼前と依頼後で、以下のとおり金額が変わっています。
【依頼前の保険会社提示額】
傷害慰謝料 123万100円
後遺症慰謝料 187万円
後遺症逸失利益 431万5807円
休業損害 61万4800円
通院交通費 8万9920円
入院雑費 11万9900円
治療費 1万9610円(他に労災支払分あり)
上記合計 826万137円
過失割合 依頼者15%:相手方85%
過失相殺額 -123万9021円
既払額(治療費等) -63万4410円
保険会社提示額 638万6706円
【依頼後の示談金額】
傷害慰謝料 219万3301円
後遺症慰謝料 550万円
後遺症逸失利益 507万2997円
休業損害 61万4800円
通院交通費 8万9920円
入院雑費 16万3500円
治療費 1万9610円(他に労災支払分あり)
上記合計 1365万4128円
過失割合 依頼者15%:相手方85%
過失相殺額 -204万8119円
既払額(治療費等) -63万4410円
示談金額 1097万1599円
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高次脳機能障害の事例
60代の女性(パート従業員)が、原付で走行中に追突された事故でした。
後遺障害等級12級の通知に納得がいかないとのことでしたが、ご依頼後、9級に等級が上がりました。
等級が上がったことから、依頼前と依頼後で、以下のとおり金額が大きく変わっています。
【依頼前の保険会社提示額】
傷害慰謝料 200万円
後遺症慰謝料 335万円
後遺症逸失利益 224万607円
休業損害 213万2132円
通院交通費 1万9170円
入院雑費 15万9000円
治療費 824万6309円
上記合計 1814万7218円
過失割合 依頼者10%:相手方90%
過失相殺額 -181万4722円
既払額 -1037万8441円
保険会社提示額 595万4055円
【依頼後の示談金額】
傷害慰謝料 258万円
後遺症慰謝料 830万円
後遺症逸失利益 1263万3036円
休業損害 337万215円
通院交通費 8万1160円
入院雑費 15万9000円
治療費 824万6309円
その他 4935円
上記合計 3537万4655円
過失割合 依頼者5%:相手方95%
過失相殺額 -176万8732円
既払額 -1037万8441円
示談金額 2322万7482円
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死亡事故の事例
60代の女性(主婦)が、道路を横断中に、車と衝突して亡くなられた事故でした。
依頼前と依頼後で、以下のとおり金額が変わっています。
【依頼前の保険会社提示額】
死亡慰謝料 1600万円
死亡逸失利益 1337万5153円
葬儀費用 99万3002円
戸籍取得費用等 4200円
上記合計 3037万2355円
過失割合 依頼者20%:相手方80%
過失相殺額 -607万4471円
保険会社提示額 2429万7884円
【依頼後の示談金額】
死亡慰謝料 2500万円
死亡逸失利益 2964万3444円
葬儀費用 99万3002円
戸籍取得費用等 4200円
上記合計 5564万0646円
過失割合 依頼者10%:相手方90%
過失相殺額 -556万4064円
示談金額 5007万6582円
- 「弁護士基準だと、具体的な賠償金額はいくらだろう?」とお考えの方は、こちらの賠償金自動計算機のページで、かんたんに自動計算できます。
物損の慰謝料は原則として請求できません
交通事故で車が破損した場合のように、物を壊したことに対するおわびのお金(物損の慰謝料)は原則として請求できません。
物損の場合、修理代や買換費用などは請求できます。
ケガや死亡の場合と異なり、経済的な損失を回復すれば十分と一般的に考えられています。
被害者に落ち度(過失割合)があると減額されます
- 過失割合って何ですか?
- 過失割合とは、交通事故発生についての加害者と被害者の落ち度の割合です。加害者と被害者のそれぞれの落ち度について合計を100%として●%:●%という比で表します
- 過失割合があると賠償金額に影響しますか?
- はい。被害者の過失割合の分は、次の計算例のように賠償金から減額されます。このことを過失相殺(かしつそうさい)といいます
【計算例】
治療費20万円、慰謝料50万円、休業損害30万円、被害者自身の事故発生の落ち度が20%の場合
(20万円+50万円+30万円)×80%=80万円
- 保険会社の担当者に『あなたの過失割合は●%です』と言われたけど、納得いきません!
- 保険会社の意見が正しいとは限りません。当サイトの過失割合のページでは、過失割合が何%かをくわしく調べることができます。ぜひ活用ください。
いつもらえるのか
次の3つのお金は「示談する前」に保険会社からすぐに支払ってもらえることが多いです。
(「示談」とは、被害者が保険会社と話し合って賠償金をいくらにするか決めることをいいます。)
- 治療費
病院に直接支払われることが多いです。 - 通院交通費
領収書や明細書を保険会社に提出して請求します。 - 休業損害
休業損害証明書を保険会社に退出して請求します。
なぜなら、治療費や通院交通費はすぐに出費が必要なものですし、休業損害(仕事の収入が減った分)はすぐに支払われなければ生活に困ってしまうからです。
一方、上記以外の慰謝料などのお金は、「示談が成立した後」に支払われるのが通常です。
なぜなら、それらのお金はすぐに必要とはいえないからです。
慰謝料を早く払ってもらう方法
慰謝料は示談後に支払われることが多いのですが、どうしても早くお金が必要という場合には、以下の方法をとることが考えられます。
- 慰謝料の先払いの交渉をする
- 自賠責保険に請求する
- 自分の保険を使う
慰謝料の先払いの交渉をする
保険会社は、経験上、被害者のそれまでの入通院期間などから、「少なく見積もっても、このくらいは支払わなければならないだろう」という金額が分かっています。
その金額に満たない金額であれば、先払いしたとしても、示談後に払い過ぎになることはありませんので、保険会社が先払いに応じる可能性はあります。
交通事故によってどのような不都合が生じ、お金が不足しているのかを保険会社に伝えて、交渉してみましょう。
保険会社が慰謝料の一部の先払いに応じくれた場合、その金額は、後日、示談した金額から差し引かれることになります。
自賠責保険に請求する
次のいずれかの場合、加害者の自賠責保険会社に対して、自賠責保険金を請求すると、支払いを受けられる可能性があります(被害者が、任意保険会社を通さずに、自賠責保険会社に請求することを被害者請求といいます)。
- 治療費を含め、任意保険会社から支払われた金額が120万円に満たない場合
- 後遺症が残り、医師に後遺障害診断書を書いてもらった場合
- 死亡事故の場合
ただし、被害者請求をする際には、多くの必要書類を揃える必要があります。
そのような時間もないという場合は、仮渡金(かりわたしきん)を請求する方法もあります。
仮渡金の請求とは、加害者の加入している自賠責保険会社に、当座の出費にあてるためのお金の支払いを求めることです。
必要最小限の書類のみ(支払請求書、交通事故証明書、事故発生状況報告書、診断書、印鑑証明書、死亡事故の場合は戸籍謄本)の提出で請求できます。
仮渡金の金額は以下のとおりです。
受け取った仮渡金は、後で自賠責保険金額から差し引かれることになります。
自分の保険を使う
ご自身やご家族の自動車保険に「人身傷害補償保険」や「搭乗者傷害保険」が付いている場合は、それらの保険金を先に請求できる可能性があります。
特に人身傷害補償保険からは、慰謝料も支払ってもらうことができます。
保険証券でそれらの保険が付いていないかを確認し、保険会社に問い合わせてみましょう。
税金は原則かかりません
交通事故の被害者が、慰謝料などの賠償金を受け取った場合、税金はかからないのが原則です(所得税法第9条1項18号)。
なぜなら、交通事故で被害に遭った状態が賠償金によって回復しただけであり、利益が生じたとは考えがたいからです。
また、心身の損害に対する賠償金に課税されることは、多くの人にとって心理的な抵抗が大きいと考えられるからです。
所得税法第9条1項18号
「次に掲げる所得については、所得税を課さない。
十八 保険業法(平成七年法律第百五号)第二条第四項(定義)に規定する損害保険会社又は同条第九項に規定する外国損害保険会社等の締結した保険契約に基づき支払を受ける保険金及び損害賠償金(これらに類するものを含む。)で、心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得するものその他の政令で定めるもの」(*太字引用者)
例外的に税金がかかるケース
ただし、以下のようなケースでは、例外的に税金がかかることがあります。
- 事故の内容と釣り合わない高額なお金を受け取った場合
利益があると判断されることがあります。 - 破損した商品の弁償代
売却した代金と同視できるためです。 - 車が店舗等に突っ込んだ事故による事業の休業損害
事業の対価であるためです。 - 示談成立後に被害者が示談金を受け取る前に亡くなった場合
ごくまれなケースですが、被害者の遺族は、示談金を受け取る「権利」を相続したと判断され、相続税が発生する可能性があります。 - 被害者やその家族が加入する保険から死亡保険金を受け取った場合
被保険者が交通事故によって死亡し、保険金受取人が死亡保険金を受け取った場合です。 - 人身傷害補償保険金のうちの被害者の過失分
被害者の過失分は損害賠償金ではないからです。
便利な計算ツールで弁護士基準の金額を自動計算しましょう
当サイトの慰謝料などの賠償金自動計算機のページでは、慰謝料を含めた全ての賠償金を弁護士基準で自動計算できます。
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自動計算機のページでは、事故に関する情報を入力していくと、慰謝料や休業損害などが弁護士基準で自動計算され、金額が次々と表示されていきます(下図の赤矢印。パソコンの場合は画面右側に表示されます)。
<内訳表>
計算された各金額を表で確認できます(下図)。
<計算書>
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保険会社の提示金額が書面で届いた場合は、このサイトの自動計算機で作成した計算書と見比べてみてください。
必要に応じて計算書をお読みいただくと、保険会社の担当者が言っていることの意味がわかったり、必要な反論ができるようになったりすると思います。
弁護士に相談する場合も、計算書を弁護士に見せれば必要な情報がすぐに伝わります。
計算書の解説を見ておけば、弁護士の専門的な説明にもついていけるようになり、相談がスピーディで充実したものになると思います。
保険会社との情報格差をなくすために、また、弁護士に相談しやすくするために、ぜひご活用ください。
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