PTSDの後遺障害等級

更新日:2021年12月07日

執筆者:弁護士 深田 茂人

交通事故被害者が損をしないための情報を手軽に得られるように、「交通事故お役立ち手帳」サイトを運営・執筆しています。そのコンセプトに賛同する全国の交通事故に詳しい弁護士とともに、無料相談にも対応しています。弁護士歴18年、交通事故相談担当1000件以上、大分県弁護士会所属(登録No33161)。

執筆者プロフィール

交通事故で死の恐怖を味わうような外傷体験をもつと、PTSDの後遺症が残る場合があります。その場合に保険会社が認定する後遺障害等級について解説します。

後遺症の程度と等級

7級
PTSDのために異常行動が続いており、社会生活に重大な障害が生じている
9級
PTSDのために一般的な仕事でもできないものがある
12級
一般的な仕事はできるが、仕事ではPTSDのためにかなりの配慮が必要
14級
PTSDのために軽微な障害がある
等級非該当
上記等級ほどの重い症状は無い
非典型後遺症
上記等級にあてはまらない重い症状がある

等級が認定されるためには心の障害が事故によって生じたことと、心の障害の程度が証明できなければなりません。

保険会社から等級が認定されるために必要なこと

等級が認定されるためには、次の2つの証明が必要です。

  1. 心の障害が事故によって生じたこと(=事故との因果関係)
  2. 心の障害の程度

しかしながら、人の心を客観的に認識することは難しいため、上記1.2を証明するための方法論が確立しているとは言い難いです。そのため、等級を認定する者(=裁判官、損害保険料率算出機構の担当者など)によって認定結果が異なる可能性は否定ができないのですが、一般的には以下のような事情をどれくらい証明できるかが重要になると考えられます。

  • 激烈な事故であったこと(死の恐怖を味わうような外傷体験)
  • 事故後早期の発症であること
  • 症状の経過が交通事故とその後の事情による悩みや不安として説明できること
  • 心の障害が生じる他の原因(家族との軋轢、人間関係、離婚、事故前からの精神疾患など)がないこと
  • 心の障害の原因が事故によるものであると医師が診断していること
  • 日常生活や仕事の面で生じている支障などの詳しい生活実態

なお、医師がPTSDと診断しているかどうか自体にはあまり意味がないと指摘する裁判例もあります。医師の診断にはばらつきもあると考えられますので、等級の認定にあたっては、診断名そのものよりも上記のような具体的な事情を証明することが重要です。

横浜地方裁判所平成20年2月15日判決
「後遺障害認定は、後遺障害内容と程度を、診断名を参考としながら、適正な等級を認定するものであり、必ずしも要件内容の明らかでないPTSDへのあてはめは、あまり意味を有するものとは思われない。症状、経過、日常の生活状況から、実際の後遺障害による影響を認定して判断することをもって足りる。」

また、等級が認定されたとしても、事故だけが原因ではなく、自身の心因的要因も影響しているとして、素因減額(=事故が原因でない分について賠償金を減額すること)がなされるケースも多くあります。この点でも、人の心を客観的に認識することは難しいということが関係していると思われます。

このページの執筆者
弁護士 深田茂人

弁護士 深田茂人
大分県弁護士会所属
登録番号33161

大分市城崎町の深田法律事務所代表。
弁護士歴18年、交通事故の相談を1000件以上担当してきました。交通事故被害者と保険会社の情報格差をなくしたいと思い、当サイトにて執筆しています。

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